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ブロンプトンのクランプについて(私見)

ブロンプトンは完成度の高い折り畳み自転車として知られていますが、盛豚はその純正部品の中でも特に完成度が高いと感じている部品があります。
それはクランプです。

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クランプとはネジなどで物を締め付けて固定する工具の総称なのですが、ブロンプトンではハンドルポストとフレームの二箇所に設置されています。

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ブロンプトンを展開して、フレーム側のクランプを固定した状態で上から見てみると、こんなカンジになります。

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良く見てみると強度・耐久性を重視する為に、非常に良く考えられた設計になっている事が分かります。

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このクランプはフォークリフトなどの油圧式クランプと違い、一体成形のネジ式リジットクランプになっています。 フレームの折り畳み部分を固定する重要保安部品の対象になると言えますので、高い強度・耐久性が要求されます。 そしてその為には材質もそうですが適切な形状・寸法が重要になってきます。

純正クランプを観察していると、最初に気が付いたのは「応力集中による破断を防ぐ形状をしている」という事でした。 これは金属に限った事ではないのですが、物質は凹凸の凹の部分に力が掛かり易くなります。 振動や曲げや歪みによる力は凹みや溝などに集中しやすく、加重や振動などの力が加わって強度の限界を超えると、凹みや溝の部分が最初に破断すると言われています。
分かり易い例を挙げると、板チョコを折ったらV字状に刻んである溝の辺りから割れる傾向があります。 これは応力集中の応用の典型的な例です。

これを踏まえてブロンプトンの純正クランプを見てみると、内側の角にエッジを立てずにRを付ける(角張らせずに弧を描いた形状にする事ね。)事で、応力集中の対策をしている事が分かります。

(赤丸の中が角張らないように作られています。)
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このクランプは切削工法ではなく押し出し工法で作られていると聞いたことがあります。 その真偽については詳しく知りませんが、製法を問わず表面が平滑に仕上げられている事も、強度・耐久性に寄与していると考えています。

余談ですが、鋳物などでは表面がザラザラのままになっている事が多いので、極限域に達するとあの微細な凹みにも応力集中が発生する場合があります。 その為とてつもない馬力を発揮するジャンルの自動車競技用エンジン等では、エンジンブロックの強度を上げる為に、ブロックの表裏を研磨して鏡面加工をする事さえあります。
出力を上げ過ぎた競技用エンジンが壊れる時には、出力に耐えられなくなったエンジンブロックが割れてしまう事もあるのですが、鏡面加工をすると応力集中が減るので強度が上がり、ヘタに補強を入れるよりもブロックの剛性が上がるのだそうです。

(内側から見ると、エッジを立てない様になっている事が分かります。)13022706 

応力集中対策のもう一つのポイントは肉厚です。 クランプの角に当たるカーブの周辺の四箇所の肉厚に注目してみると、いかにクランプの概念を理解して設計されているかが分かります。

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①(カーブの手前)と②(カーブの中央)と③(カーブの終わり)の肉厚がほぼ均等になっています。 ②の部分の肉厚が薄いと割れやすくなりますが、前述の内側のRと相まって②の部分に応力が集中しない様に配慮されているのが分かります。
そして④の部分も同じ肉厚だと、ネジを締めた時に「てこの原理」で②に応力が集中するのですが、④の部分を少し薄くする事で、②に応力が集中し過ぎない様に締め付ける狙いがあるものと思われます。

 

たまに自作品を使われているケースや、社外品が販売されているケースもある様ですが、この純正クランプよりも優れた形状の物は見た事がありません。 これが破断すると大事故に繋がって、ヘタをすると命に係わります。

不具合が報告された例もなく操作が難しい訳でもない部品なので、今のところ盛豚はこれをメーカー保証の無い社外品に交換するつもりはありません。

 

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ブロンプトン」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
いつもの深い考察、さすがですね。
このクランプについては以前盛豚さんに教えてもらいなるほどと思いました。
比較対称で社外品の物と見比べると純正品の出来の良さが際立ちますね。
想定外の使い方をする私ですのでクランプは当然純正品でいきますよ(笑)

応力集中を避ける構造・・・フムフムなるほど
うなずきながら拝読しました。
私は車体購入から間もなく加茂屋さんのクランプに
交換してしまいましたが、今一度、見た目や質感を
比較してみようかな、という気になりました^^

この手の強度が必要なパーツは、切削だと金属の結晶が切断されて強度が落ちますからね。
鍛造や押出加工を使っているのは良い選択かと。

ただ…俺的にはフレームという強度を担う重要な部分を、ネジを回して固定ってのは如何なものかとは思うけど。
一定の締結強度に出来るかどうかがユーザー任せってシステムはイタダケません。
しっかり締めなかった場合のフェイルセイフも皆無やし。
DAHONやOri bikeの様に、誰がやっても必ず一定の固定強度になるようなロッキングシステムじゃないってのは、要改良部分だとは思いますね。

>kimotoshiさん
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今晩は。
自分でも認識を整理し直す意味で文書化・図面化してみました。
年式によって微妙に(ホントに微かに…)異なる純正クランプも、07~08年頃には今の形状に落ち着いたようです。 ツカモトさんが補則して下さっている様に、工法とも深く関わり合いながら強度・耐久性に寄与している様ですね。
私自身も改めて勉強になりましたよ。

>ocean810さん
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社外品に「どこの製品はどうだ」とか指摘したり、営業妨害をするつもりは無いのですが、純正品のクランプはとにかく工学的に熟考に熟考を重ねた上で作られていると感じます。
ともあれどうも自転車業界は自動車業界に比べて、認識が甘くて安易過ぎると言わざるを得ない部分が散見されるというのが私の意見です。
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自動車業界では重要保安部品に関する安全意識と責任意識が強く、それは社外品であっても例外ではありません。 国内で市販されている自動車のサスペンション用ショックアブソーバーは、販売メーカーやブランドは星の数ほどありますが、実は製造メーカーはたった1社がほぼ独占している…と言うか、他に責任と信頼のある物を作れるメーカーは無いという状況です。 どの新興メーカーや新興ブランドも自分で無責任なものを作るのでは無く、技術とノウハウを持つ専門の製造メーカーに外注製作(いわゆるOEMね。)を依頼して、オリジナルスペックの物を作って貰っているのが実情です。
ブレーキやクラッチについては多少件数が増えますが、それでも新興の製造メーカーは無く、どんなブランドも歴史と技術と経験と実績に裏付けられた製造メーカーに作って貰っているのだそうです。 それが人の命に係わる『重要保安部品』という物なのでしょうね。
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自動車などでは運輸省に破壊検査データーを始めあらゆるデーターを提出しないと認可が出ないので、社外品と言えどノウハウの無い見よう見まねで作ってみた製品などが出回る事は、一般道で使用できない競技専用部品と称するごく一握りの物以外にあり得ません。
売る方もそうですが、買う方もその辺を認識して判断して選ぶのが「乗る責任と義務」なのかもしれませんね。
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あっ、説教じゃないですよ!(念の為…。)

>ツカモトさん
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毎度補則と御指導ありがとうございます。
正直言って、「切削だと金属の結晶が切断されて強度が落ちる」というのは初めて知りました。
自転車部品はどうも「造り手にナメられてるのかな?」と感じる事があり、私的にヘッドパーツはその代表格だと思います。 「鍛造部品や硬度の高い鋼や違う寸法や構造の物をもっと使えよ」と思う時があります…。
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ご指摘通りブロンプトンのネジ式クランプによるフレーム固定は、私も常々「ちょっと無責任だな」と感じています。 全てのオーナーが一定の固定強度に出来るロッキングシステムにすべきですね。
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「聞こえてますかー、B社さん!」(笑)

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