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『RALLY CARS 01』(三栄書房)

モータースポーツにおいてサーキット周回レースと双璧を成す競技であるラリー。 その歴史上に燦然と輝く永遠の名車…。
それがランチア・ストラトスHFです。

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ちょっとラリーの歴史に詳しい人なら誰もが知っているランチア・ストラトス。 個人的にはこの車を知るという事は車に限らずビジネスの勉強に役立つと考えています。 その理由はストラトスの発案者であり開発責任者であったチェザーレ・フィオリオ氏が、ストラトスを作り出した事情・背景などを知れば良く分かります。

(ラリーでF1で有名なカリスマのチェザーレ・フィオリオ氏)
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グループA時代を知る人にとっては、「ランチア=ラリー界の王者」というイメージが強いと思いますが、実は創業以来すっと企業として存続するのが精一杯な小兵の自動車メーカーだった事はあまり知られていないようです。

大企業と違って新型車の開発費用もなかなか工面できないので、1972年にモデル末期のランチア・フルビアが奇跡的にモンテカルロラリーで優勝したというだけで注文が急増し、廃盤寸前だったフルビアを6年間も生産延長できたので、その生産ラインにいた従業員6千人を解雇せずに済んだと言われています。

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ヨーロッパではレースやラリーの成績・評価が乗用車の売り上げに直結する自動車文化なので、新型車を開発する費用をなかなか工面できないランチアにとって、ラリーで勝つという事は社運を賭けた宣伝であり、車内のモータースポーツ部門が背負う責任がどれほど重い物だったのかは想像に難くありません。

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ところが市販乗用車をちょっと改造しただけのラリーカーで競われていたラリー界に、大排気量のポルシェ・カレラRSR2.8ℓやFRPボディのアルピーヌ・ルノーA110といった大企業のレーシングカーが参入してきました。
子供のケンカに大人が乱入して来たようなもので、フルビアの排気量を1.1ℓから1.4ℓそして限界の1.6ℓにアップするなど頑張って来ましたが、レーシングカーが相手ではまるで歯が立ちません。
このままではラリーで勝てなくなって会社がヤバイです…。

(旧式のフルビアで頑張って来たけど、もうこれ以上はムリ…
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フィオリオ氏は考えました。

「ライバルの大企業が持ち込んだレーシングカーに勝つには、こっちは絶対に勝てるラリー専用のスーパーマシンを作ればいいんだ!」

こうして専用のスーパー必勝ラリーカーを規定台数分だけ製作する事になりました。
工業製品を作るにあたって何となく数多く売れる物を作るのではなく、特定かつ具体的な目的の為に絞り込んだ物を作る事をパーパスビルドと呼びます。 ランチアという小兵のメーカーがライバルの大企業を凌駕するパーパスビルド車を作る決断をしたのです。

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「でもそれってどんな車を作ればいいんだろう…?」

そこでフィオリオ氏は自分よがりで考えず、賢明にもドライバーやメカニックなどの現場でラリーカーを扱う人達に「無敵のラリーカーの条件って何だと思う?」と意見を求めて、何度も何度もミーティングを繰り返しながら二ヶ月がかりで仕様を練り上げたそうです。

(フィオリオ氏のロングインタビューが掲載されてる! でかした!!)
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他社の1/4程度という限られた予算の中で、ライバル会社の妨害工作にもメゲず、予定より大幅に遅れながらもストラトスは完成します。 そしてラリー活動の資金不足を補う為に、1972年のデビュー戦からスポンサーのマールボロのパッケージング色に塗装されて、史上初めて無線機を積んだラリーカーとしてストラトスは走り出しました。

F1でロータスがJPSカラーで走るよりも5年も前の事です…。

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そしてプロトタイプの問題点も、稀代の天才ドライバーであるサンドロ・ムナーリ氏の努力と開発によって解決し、ついに頂点へと上り詰めたのです。

(やっぱストラトスはアリタリアカラーでしょ!)
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(ライバル達と比べると一目でその先進性の高さが分かります。)
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(サンドロ・ムナーリ氏のロングインタビューが掲載されてる! でかした!!)
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目的の為に手段(専用の車作り)を考え、頭を使って(規則や条件を)分析・解釈し、現場の意見に耳を傾けて取り組む事。 社運を賭けたラリーに勝つ為にストラトスを作ったフィオリオ氏の行動には、企業人に必須な条件と教訓が揃っていました。 この事は『幻のスーパーカー』と併せて読むと更に良く分かります。
盛豚も色々な場面でこの概念を実際に応用する事があります…。 

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それにしても三栄書房さんからは、過去のモータースポーツ絡みの本が次から次へと出て来ます。 どうも盛豚あたりの世代を狙撃するかのような記事ばかりなところを見ると、もしや編集長が同世代なのではないかと勘ぐりたくなります…。

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コメント

ランチャとくればストラトス!
ストラトスとくれば、風吹裕矢!
でしたよね…

わたしゃ、ストラトスを初めて知ったのはソレでしたわ…
この後の037ラリー・デルタには興味を持てなかった…

ストラトスにはアリタリアカラー以外にはあり得ません!(きっぱり)

>ゆっきょさん
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確か北海の竜が先に乗っていた筈ですが、風吹裕矢選手の方がインパクトが強かったですね!
  
以前はストラトスもレギューレーションを逆手に取ったムチャな車だなと思っていたのですが、この本を読むと箱車ながらレーシングカーなカレラRSR2.8ℓやFRPボディのA110などというムチャクチャな車をラリーに持ち込む事こそムチャな話だった事が良く分かりました。
ストラトスが走ったGr,4時代はそれでもまだ古き良き時代だったと言えますが、037
ラリーや038デルタS4などというGr,B時代は狂気の沙汰としか思えない殺人的な車輌が横行し、死亡事故が続発して暗い時代でしたからスリルはあっても魅力はありませんでしたよね。
個人的にはGr,Bを知る事で反省と教訓と言う意味で良い勉強にはなりますが、Gr,B末期のワークスマシンは非人道的な造りなのでどれも好きになれません…。

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