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リカンベントのクランクについて考える(私見) おまけ

以前、リカンベント・ローレーサーのクランク長テストにあたり、特に銘柄・グレードには拘らずに各サイズを調達しました。 ベストなクランク長を見出してから後で好みの銘柄を再調達するつもりだったのですが、結果的にこれが思わぬ発見へと繋がる事になりました。

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一般的にユーザーのクランク選びの基準は、ブランド・デザイン・重量・コスト×物欲or見得で成り立っている傾向を感じます。 これらはユーザーの感性や数字で如実に表れるので、カタログを見ながら比較し易い要素なのですが、実はこれ以外にもカタログに記載されていない別の要素もあったりします。

ご存知の方も多いとは思いますが、自転車のペダルをこいでいるとクランクは僅かにたわみながら回転しています。 回転方向だけでなく横方向にもたわんでいて、おそらくスーパーカメラなどで撮影したらビックリするような映像を見る事ができるでしょう。

自転車業界におけるハイアマチュアやプロライダーのニーズとして、クランクは軽くて剛性の高い物が良いとされる傾向を感じます。 しかしこれはパワーライダーや体重が重いライダーには該当するものの、盛豚のようにペダリングが下手で貧脚かつ強度の乏しい脚のライダーにも当てはまるとは限らず、むしろ軽過ぎず硬過ぎないクランクの方が相性は良いケースもあると考えています。

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この考えは例によって自動車のエンジンに関するノウハウの応用によるものですが…

金属の塊とも言える自動車のエンジンブロックやクランクシャフトでも、ある程度のクランク回転数(タコメーターにrpmで表示されるヤツね…)になるとたわみが発生したりします。

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F1のエンジンブロックみたいに剛性が極端に高くて超高回転まで回しても全くと言えるほどたわまないエンジンブロックには、同じように超高回転まで回してもたわまないガチガチに硬いクランクシャフトを組み込む必要があります。

(F1用V12気筒エンジン)
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(F1用V12気筒エンジンのクランクシャフト)
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もし剛性が足りなくて高回転まで回すとたわんだり振動が出るクランクシャフトを組み込むと、振動が出てうまく回転が上がりませんしレスポンスも鈍くなってしまいます。 つまり『回らないエンジン・吹けないエンジン』になってしまうのだそうです。

一方で市販車ベースのレースでよく使われた、日産L型エンジンのように古くて剛性が低くたわみ易いエンジンブロックには、剛性が高過ぎない程々の硬さでたわみが少々出るクランクシャフトを組み込んでやると、たわみや振動が治まって意外と高回転まで回り易くなりますし、全域でトルク・パワーが出せます。

(L型直列6気筒エンジン)
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(L型直列6気筒エンジンのクランクシャフト)
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逆にこうしたエンジンブロックにF1用と同等の高い剛性を持つ硬いクランクシャフトを組み込むと、エンジンブロックのたわみにクランクシャフトが同調しないので、反作用によって振動が発生して回りの悪いエンジンになってしまうのだそうです(※…同じカテゴリーのレースをやっていた第一人者が試した実績があります)。

またクランクシャフトの重量に関しては、車重が軽かったり加速・減速が激しい走り方の場合には、軽くて慣性が小さくレスポンスの鋭いクランクシャフトが適しており、車重が重かったり非力だったり巡航や一方的な加速のみの走り方には、重くて慣性が大きくレスポンスの鈍いクランクシャフトが適している(つまり強い慣性によるフライホイール効果ね…)と言われています。

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これらのノウハウを応用して自転車の事を考えてみると、自転車のフレーム材質や剛性の強弱は脚質や肉体の強弱や体重の大小に合わせた物を選ぶ事が好ましく、その脚質や肉体とフレームの剛性に合わせた剛性のクランクを選ぶ事が好ましいのではないかという方向性が見えてきます。 また重量だけに注目すると、豪脚さんは軽いクランクを・貧脚さんは軽過ぎないクランクを組み合わせるのがベターである可能性が考えられます。

つまりカタログには記載されていない剛性面の情報も判断基準に取り入れる必要があり、無造作に高級・銘柄・ブランド志向で選択するのは好ましくないという事です…。

これは実力者だけが高級品を手にして良いと言っているのでは無く、相性やトータルバランスを重視すべきであるという考えに基づいています。
自転車の世界では「軽さが全てだ」みたいな思想がよく見受けられますが、極限を競うレースでさえパワーが一番ではなくトータルバランスと信頼性が一番大事ですし、その時に最もトータルバランスで優れている物が勝者となります。

例えばもし仮にパワーや重量では不利でも、ライダーの負担を軽減した疲れ難い車体に仕上げる事も一つの方法です。
一番高価な部品を付ける事が必ずしも一番良い事ではありません…。

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実はこのクランク剛性・重量の考察に関する個人的な検証結果は、既にある程度は出ています。

LOW-RACERを手に入れた時に組み込まれていた170mmクランクは、シマノ社のアルテグラ6500でした。
クランクテストで使った172.5mmクランクはシマノ社のFC-R565というグレードで、海外生産品の中では105的な位置付けらしいのですが、構造はティアグラに良く似ています。 第一印象では「えむきゅうさんのお蔭でたまたま手に入ったけどパッとしないグレードだし、テストが終わったらもっとイイ銘柄を買い足そう…」と思っていました。
ところがこの何の変哲も無いクランクは、想像以上のパフォーマンスを秘めていたのです。

実際に組み付けて走ってみるとクランク長の効果だけでなく、剛性の面でも盛豚の脚との相性が抜群に良くて初めから物凄く気持ち良かったのです。 二ヶ月のブランク開けにちょっと初期ナラシをしただけでポンと150km走ってみたのですが、走りの割りにあまり疲労感もありませんでした。

(自転車屋さん曰く「リカンベント界で着実に装着率が増えている」172.5mmクランク)
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ホローテックⅡなどの高級な中空鍛造箱型構造クランクではありませんが侮る事なかれです。 自動車用エンジンと自転車の両方に詳しい人が見たらよく分かると思いますが、肉抜きの形状が非常に良くて(良く出来た自動車用のコンロッドみたいな形状です)、良く見てみると「意外と形状的には良さそうだな…」と感じました。

(表面)
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(裏面の肉抜きの形状が秀逸です)
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走り込んで距離を伸ばすほどに、クランクの長さだけでなく重量が生み出す慣性と盛豚の脚と相性の良い剛性(たわみ具合)のおかげで、路面のギャップや振動などから来るキックバックを大幅に打ち消してくれて、脚の各関節の疲労感がほとんど無い事が分かります。
それなりに剛性感があり決して柔らかいという印象はありませんが、何故かドライカーボンファイバーの感触に少し似ていて、無駄な振動や衝撃は幾らか打ち消されている印象があります。 このクランクは手放さずに今後も175mmクランクと交互に使って行く事にしました。

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次にテストした175mmクランクはアルテグラ6650でしたが、クランク長の問題だけでなく今までに経験の無い軽さと剛性の高さだった為、始めは路面のギャップなどから来るキックバックに起因する脚の各関節の疲労感がありました。

(すっかり標準装備になった175mmクランクですが…)
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このクランクはホローテックⅡと呼ばれる中空鍛造箱型構造になっていますが、本来クランク・コンロッドなどにおいて中空鍛造箱型構造は、H断面構造や I 断面構造に比べて伸び側の剛性面で不向きな構造ですので、その分は肉厚や鍛造加工の技術・ノウハウによって補っているものと思われます。 

(MTB用の I 断面クランク)
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(この裏面にも同様の肉抜き加工が施されています)
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アルテグラは言わずと知れたレース用グレードですので、その硬さには慣れるのに時間が掛かりました。 これがデュラエースになると更に硬くなるのでしょうか? そしてもし鍛造製法も半熔融鍛造で造られた日には、どれだけ薄く硬く軽くなるか分かったものではありません。
カーボンクランクについては試した事がありませんが、カタログ値を見る限りでは非常に軽いようです。 しかし前述の通り硬すぎるクランクは脚へのダメージが怖いので、試乗もせずに手を出す気にはなれません。

高級なクランクは試乗もせずにカタログ買いするものではないなぁと、つくづく思いました。

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クランクテストでの抜群の慣性効果に魅せられて、その後もアルテグラ6650の175mmクランクを使っている盛豚ですが、その剛性の高さ・硬さはちょっぴり持て余し気味です。
欲を言えばFC-R565の175mmクランクが格安で出て来て欲しいところですね…。

それからこれは想像の域を出ない話ですが、もしトロイテック社製のドライカーボンファイバー製クランクがあれば、「剛性が高くて力の掛かりはイイけれどキックバックや振動が少なく、硬過ぎず疲れなくて気持ちイイ」という夢のようなクランクになるんじゃないかと思う今日この頃です(車体が車体なので、ついつい期待してしまいます…)。

おっとfoxさん、こっそり特注しちゃダメですよ。(笑)

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コメント

こんばんは。

クランクの剛性までは考えたことがありませんでした。

確かに軽ければ良いというわけではないのはホイールでは実感していますので、納得できます。
ただホイールの様に走りに直に影響が出るわけではないのでクランク長ですら比較検証が難しいので、重量や材質までとなるとより大変ですね。

そーいや175ならカーボンのデュラエースがありましたね。
今でも手に入りますよ。

…高いけど(^^)

私はトライクに5703、アルミローに6604、レボに6650を入れてますが、前者2台は先にフレームが撓んでしまいクランクの剛性が感じられません^^;
6650は、ホイールのトラクション性能の違いを感じ取れるくらいしっかりした剛性を感じます。
特にAC26との組み合わせでは、ギャップでクランクが弾かれてしまうくらい全体の硬さを感じます。
XTRではそこまで強い反発はないので、ホイールとの相性も重要なんだなと常々思います。

TROYTEC製カーボンクランク…。興味はありますが、多分硬すぎて踏めないでしょうね^^;

>えむきゅうさん
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今晩は。
私のLOW-RACERは靭性が高くて柔らかい鉄フレームですが、それでも短期間で三つのクランクを経験した事が吉と出て、それぞれの特性と剛性の違いを体感できました。
そして肉体的に強靭とは言えない私の脚だからこそ、疲労感やダメージでその剛性と硬さが多少分かりました。(アルテ、始めは痛かったっす…w)
欲を言えば重量や材質まで追求してみたいのですが予算の問題もありますし、最も試してみたい材質(人間の肉体と最も合う金属と言われている鉄製)はありませんからねェ…。(苦笑)
カーボンのデュラエースですか…、痛そうなのでfoxさんにお任せしておきますよ。(^^)

>foxhounderさん
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アルミローのフレームが撓んでしまってって…(超苦笑)。 でもそんな破壊力抜群なfoxさんの脚でも、やはり6650には剛性感を感じられますか? 流石はレースグレードのアルテですね。
アルミのわりに撓む6500に比べると、意外と剛性で上回りつつ護ってくれるFC-R565は気持ち良かったです。 ところが6650を入れたとたんにキックバックで弾かれる弾かれる! 最初の一ヶ月は「えむきゅうさんに返品できないかな…」などと思ったりもしましたが、靭性が高くて柔らかい鉄フレームのお蔭で多少は慣れて来ました。(笑)
XTRだとAC26よりも和らぎますか? シマノもホイールはしなやかなので、私のデュラ24Cでもかなり吸収してくれている感がありますよ(そんな私のLOW-RACERにfoxさんが乗られた日には、フニャフニャに感じてもどかしいでしょう…)。
TROYTEC社がカーボンクランクを作ってくれたらぜひ試してみたいですが、やっぱそれなりの硬さになるんでしょうかねェ…。

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