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リカンベント・ローレーサーについて考える(私見) その4

最近たま~に考える事があります。
「究極のリカンベント・ローレーサーってどんな物だろう?」と…。

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色々なリカンベントに試乗させて頂く機会に恵まれては、その感想と発見を忘れない内にブログに書き留めてきた盛豚ですが、最近は頓に試乗の機会が増えていると感じます。 以前はローレーサーが中心だった対象車種にもハイレーサーやミッドレーサーが増えて、先日もリカンベントオフ会の交換試乗会やシクロジャンブルのお蔭で色々な経験をさせて頂き、また多くのレーサーを見てきました。

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自動車やオートバイのレーサーやチューニング車やそれらのベース車の場合、傑出しているマシンという物は乗ったりエンジンをかけたりしなくても、その作り込みを1G静止状態のまま傍で見ただけで、「こいつは速い、俺には分かる!」と確信できる程のオーラのような物を感じる事がよくありました。
自動車のフォーミュラーカーは言うに及ばずオートバイの市販レーサーTZや、国産自動車ではR32型スカイラインGT-RとFD3S型RX-7が良い例で、これらは一般人でさえも一目見るなり「何か凄そうだな…」と言っていたのを覚えています(だからこそ裏をかく為に自分のマシンはそうしたオーラを隠す工夫をしたものですが…)。

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これに対して自転車の場合はこうしたオーラを放つ物は滅多に無く、何かあってもせいぜい「これは良さそうだな…」と感じる程度で(TROYTEC REVOLUTION LRでさえノーマルではそうでした)、大抵の場合は「これはお金が掛かっていそうだなぁ…」くらいの印象しかありませんでした。

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ところがリカンベント・レーサーでは外見上の印象とは裏腹に、一度着座してペダルを踏み込んで少しでも走り出そうものなら、たちまち「能ある鷹が隠していた爪」が露わになるかのように素晴らしい走り(特に反応性と路面追随性ね…)と乗り味を感じさせてくれる事が度々あるので、こうした「走らせてみないと分からない」という外観と乗り味のギャップは、自転車特有の楽しみかもしれないと思っています。

まぁ外見的なモノも走りもオーナーが手を入れると大分印象が変わる事もあるのですが…。

(カーボンリヤホイールが入る前は「値段が高そうだし良さそうだな」と感じるくらいで、特に「こいつは走る!」的なオーラを感じなかったのですが、今では…)
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(これは露骨にオーラがありましたよ…)14052104  

自転車の場合は自動車やオートバイと違って、純粋な競技車輌でも灯火類などの保安部品を付ける事によって公道でも容易に乗れる上に、軽さが命のロードレーサーでは一般人がワークスレーサーと同等かそれ以上の(軽量化を果たした)スペックを持つ競技車両を手に入れる事も不可能ではありません。

ロードレーサーのユーザーの中にはこうした走行性能に魅せられてしまい、際限無く費用を注ぎ込んでしまう人もいると聞いた事があるのですが、LYNXX→LOW-RACER→LOW-RACERを仕様変更→M5→M5を手直し→M5にディープリムホイール組み込みと、進み続けて来た盛豚も似たようなモノかもしれません。

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「それ以上」を追求して今の車両に手を入れる為には、色々なリカンベントに試乗する事で外の空気を吸って「それ以上」とか「それ以外」を知る事がとても役立ちました。
こうした経験を生かして自分の使用条件に適合する物を限られた条件下で形にしたのが今のM5なのですが、これは「予算に糸目を付けず究極のレーサーを作る」というスタンスとは違った路線で辿り着いた結果です。

「ならば自分が吸収した物を基軸として究極のレーサーを追及したら、どんな形に行き着くのだろう?」

おそらく新興のリカンベントメーカーの中には、こうした思いが高じた業界人が設立されたケースも少なからず存在するだろうと思うのですが、盛豚はそこまで野心家ではないのでここは一つ考察と妄想で片付ける事にしました。

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盛豚がこれまでの経験で感じた「走る」レーサーの条件を挙げてみると…、

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①空力特性:低いフォルムと小さい前方投影面積による高い空力特性が有効

②フレーム:空力特性の良い形状のドライカーボンフレームが有利

③車輪寸法:慣性と推進力に優れたロード用フルサイズが有利

④駆動効率:チェーンラインは直線的で長さは短い事

⑤操縦性:ハンドリングスタビリティが高く、クランクヒットやヒールヒットの懸念も少ない事

⑥ポジション:空力とパワー効率の良いポジションは…シートリクライム角は20°前後、BB⇔シート相対位置は仰角が150°前後・高低差約30cmのハイBBポジション

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①については確実にローレーサーが有利だと考えます。 実際、盛豚がローレーサーを好んで選ぶ最大の理由は「空力性能がもたらす高い走行性能」です。
自動車のレースに詳しい方にはご存知の方も多いと思いますが、空力負荷物は地上高が高い位置にあればあるほど大きな影響を及ぼします。 ダウンフォース効果と空気整流効果を期待されるウィングなどのエアロパーツは、より高い位置に取り付けるほどに効果が上がるので、F1を始めとする自動車レースではレギュレーションが許す限りウィングを高い位置に取り付けます。 一方でシャーシやボディー本体は空気抵抗を少しでも減らすべく、レギュレーションが許す限り低い位置に抑えようとします。

②については自転車業界では認識が不足している空力特性を追求する為に、少しでも車輪との隙間を絞り込みつつ反対側が涙滴型などの流面型断面形状をしているのが望ましいでしょう。 材質についてはもう説明の必要も無いと思いますが、軽さ・反応性・衝撃吸収性・路面追随性の全てにに優れた、UDもしくは3Kによるドライカーボンが最適と思われます。

③についてはミニベロとロードレーサーの単純比較で分かるように、走行性能を追求すればロードレーサー用の700Cもしくは650Cがベストの選択でしょう。

④についてはチェーンラインがアイドラープーリーなどで屈折するとフリクションロスが生じますので、屈折角は少しでも浅くする事が望ましいです。 また、プーリー径を少しでも大きい物にするほどに屈折部のRが大きく緩やかになりますので、フリクションロスは小さくなります。 更に前輪駆動などチェーン長が短い物ほどフリクションロスが小さくなります(前輪駆動でチェーン長が短いPerformer FFWDは、小径車にも拘らずフルサイズに迫る走行性能があると言われています)。

⑤についてはトラックレーサーとしてバンクで乗る訳ではないので安全上最低限度のハンドル切れ角や、タイヤとクランク(できれば足も)のクリアランスは必要だと考えています。

⑥については言うまでも無く空力とパワー効率の良いポジションの確保が必須だからです(具体的な数値の根拠についてはペダリングの考察で述べた通りです)。 盛豚は高速域で前方投影面積を絞り込まれたより空力の良いライディングフォームに移行する為に、走行中に少し座り直す事もあります。 また、最近ではこのパワー効率が呼吸効率と密接な関係にある事も確認できていますので、こうしたライディングポジションを確保できるレイアウトは必須条件だと言えます。

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これら全ての条件を満たす市販モデルのリカンベント・レーサーは見当りませんね…。 ニアピンさえも無さそうだなと思っていたら、プロトタイプに一台だけ思い当たる物がありました。
それはZockra(ゾックラー)社のKouign Amann(クイニー・アマン)です。

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Kouign Amannは多少仕様が異なる三台だけが作られたプロトタイプらしいのですが(同社が現在販売しているのはハイレーサーのみです)、その中でもKouign Amann GDFは特に良さそうで、メーカーサイトの画像で見る限りはシート角がもう少し水平に近くなって欲しい事と、BB高をもう少し高くして欲しい事の二点を除く全ての条件を満たしています。

(Kouign Amann GDF)
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フロント周りを見てみると車輪との隙間を絞り込みつつ流面型の断面形状になっていて、空力的に優れているであろう事が見て取れます。 センターステアリング車みたいにBB一体構造のステアリングブロックを持つ前輪駆動とする事で、クランクヒットやヒールヒットは発生しない構造になっています。

(空力の良さそうなフロント周り)
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チェーンラインはアイドラープーリーを介さず一直線に引かれていて、かつ非常に短く仕上がっています。
走行性能はフルサイズに迫ると言われる前輪駆動の小径車Performer FFWDと比べても、アイドラープーリーが無く、チェーンラインは屈折しておらず、チェーン長は約半分と短く、車輪は700Cと、極めて高い走行性能を持つであろう事が予想されます。

(Performer FFWD)
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Kouign Amann GDFはPerformer FFWDと違って、フレームではなくステアリングブロックに動力源であるクランク・BB周りがマウントされている構造上、多少慣れたとしてもセンターステアリング車と同様に走行中も力任せで雑な「踏み込みペダリング」をせず、正確な「回しペダリング」をしてある程度バランスを取る事に注力せざるを得ない可能性がありますけど、舵を切るヘッド周りは一般的なローレーサーにかなり近い位置・角度になっていますので、バランスを取る事にセンターステアリング車ほど多くの注意を費やさずに済むと思われます。
その上ドロップハンドル化されたGDFのハンドル周りはホールド性が高そうですので、その分ペダリング・ライディングに専念・集中できてパワー効率が高い… つまりかなりのハイパフォーマンス車であろうというのが、個人的な見立てです。

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あくまでプロトタイプですので完成度次第という事になるんでしょうけど、構造的にはかなり良いモノがありますので、市販に耐え得るレベルまで開発が進んだらTROYTEC REVOLUTION LRと双璧を成すか、それ以上のローレーサーになるんじゃないかと思うんですけどねェ…。

Kouign Amann GDF、乗ってみたいなぁ…。

今からでも市販してくれないかなぁ…。

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コメント

クイニーアマンいいですね!
特に、前後700Cローレーサーのホワイト&ブルーのモデルに乗ってみたいです。
センターステアリングに近い形なので、やはり試乗して安心できないと買う決心ができそうにないですが(それ以前にプロトタイプなので、どちらにしても買えませんが)。

個人的には、以前に自転車屋さんで聞いたことがある、前輪駆動のNoComとか、チャレンジのNME(どちらもプロトタイプ)にも乗ってみたいです。

M5のカーボンローやチタンローも・・・

おお、Zockraのクイニー・アマンですか。
アレはカッチョいいけど、ハンドリングはやっぱしCRUZBIKE社のリカンベントみたいになるのは間違いないので…かなり慣れが必要でしょうね。
BB位置が低いのも、ステアリング軸に少しでもペダルの力点を近づけてネガティブを無くそうって考えだろうし。
そうは言っても、マシンに対する愛さえあればなんて事無く克服できる事は間違いないかと。
試作だろうがなんだろうが、愛さえあれば入手できますよ(笑)

金属ならオーダーできるかも...
ところで、ステア系/BB一体タイプって構造的にはダルマ自転車ですよね。

>El Gatoさん
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Kouign Amannは「乗り難そうだな」と思っていましたが、流石に前後700CのGDFは是非とも乗ってみたいと思いました。
NoComはノーマルでも前輪駆動でもジオメトリーに無理がありますから、トラック専用ですねェ(challenge NMEも似たようなモンですが…)。
M5カーボンローやチタンローは…、誰か買う人いないかなぁ…。

>ツカモトさん
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Zockra社は現在ハイレーサーのみをリリースしてますので、ツカモトさんの管轄ですね。(笑)
仰る通りKouign AmannはCRUZBIKE系やオーディナリーに似た特性が予想されますから、二の足を踏んでしまいますね~。(←どの道プロトタイプ!)
BB位置についてもご指摘通りの理由でペダルの力点を無闇に高くできないせいだと思われますね。
Kouign Amann GDFへの愛情が一番強いのはfoxhounderさんですので、現地へ飛んで買い付けるのは彼に任せて我々はこちらで彼の帰りを待ってましょう。(笑)

>Satoさん
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クロモリフレームのSpeculoos(スペキュラーズhttps://www.youtube.com/watch?v=EWFk2NoOq5w)でしたらNAKAGAWAでレプリカを作って貰えるかもしれませんね。
ステアリングブロックにBBが設置されているという事に関しては、ハブとペダルが直結しているダルマ自転車(いわゆるオーディナリーですね)と共通する点がありますけど、もう少し乗り易いでしょうね オーディナリーは本当に乗り難いですから…。

BB低いし、グニャグニャしそうで乗りにくそう。

>えむきゅうさん
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https://www.youtube.com/watch?v=EWFk2NoOq5wを見る限りホイールの慣性とジャイロが弱い低速ほどグニャグニャして乗り難いみたいですね。
リカンベントはパワー効率を求めるのであればBBが高いに越した事は無いですけど、一方でこの車両に関してはパワーポイントが高くなるほどにステアリングブロックの舵へワルサしそうですから悩ましいところですね。 まぁそれでも個人的にはハイBBがイイんですけど…。

M5はそんなにオーラありましたか。

SA22Cカッコ良さそう!
浮いたボンネットに沢山のダクト、ウインドウ越しに覗く計器類等、全然オーラが隠せて無いのですが(笑)

>Yおかさん
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思うにYおかさんのM5には皆「興味あるけど凄過ぎて圧倒されている」というのが本音なんじゃないでしょうかね?
SAはメンテ中だったのでボンネットが半開きですが、実は閉じるとノーマルと同じで段差は無いんですよ(小さいダクトが多数並んだ熱対策のルーバーだけはどうにもなりませんが…)。 追加メーターは操縦性と視界の妨げにならずに視認性を確保する意味でダッシュ上に設置しましたが、外から目立たないように全て黒塗りを選んでいます(コゾー達のこれ見よがしな銀色の巨大メーターとは違うと言いたい訳で…)。 ホイールは色も形も地味な黒塗りのSSRメッシュで、タイヤもフェンダー内に収まるギリギリのサイズを選んで幅よりも直径によるグリップ力を確保しました。
これでもレースに集まるマシンの中では音も含めて一番地味な仕上がりでしたので、中部・近畿地区合同レースで一対一の決勝まで進んだ時には皆驚いてましたよ(←出走車輌の中ではオーラのかけらも無かったので、皆ノーマークだったそうです)。

理想を追求するのでしたら1度フルオーダーでビルダーに注文してみると良いかもしれませんね

>nabeさん
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ようこそお越し下さいました。 コメントありがとうございます。
仰る通り究極はオーダーメイドという事になるのでしょうね。 実際に私と似た様な考えに加えて行動力と財力をお持ちの方が、既に二年前からオーダーして今尚待ち続けてられると聞いています…。
私としてはこの前輪駆動のKouign Amann GDFか、後輪駆動でLORO NAKAGAWA NL3と同じ駆動システムを搭載したドライカーボンレーサーという物を見てみたいところなのですが、財力的に空想の域を出そうにありません…。(苦笑)

>盛豚さん
僕は、27年ぐらいしかリカンベントに乗ってない新参者なので未だ盛豚さんのような域には達していません。
求める物にもよりますがWorld Human Powered Speed Challengeに出られてる人に聞くと色々とためになる事を教えて下さりますよ

>nabeさん
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私はリカンベントに乗り始めて5年程度の者に過ぎず、自分では若輩者だと思っています。 その一方で人が蓄積できるノウハウの質や量とレベルは、その世界に身を置いた年月に必ずしも比例しないとも考えています。
ストリームライナーにもそれなりに関心はありますが、私が取り組んでいるのは表題の通りリカンベント・ローレーサーであり、それによる一般走行に対応できる範囲でのスポーツ走行です。
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リカンベントは国内では競輪場など競技用バンクを走ろうにも、一般人向けに公開の走行会にすら参加を拒否されますので(実績アリ…)、我々の様な一般人は特殊なコネでも無い限り国内では公道での一般走行の範囲でしか取り組めません。
もちろんストリームライナーから学び取った事を断片的にローレーサーへ応用するのも一つの方法ですが、その延長線上であっても「極端に条件を絞り込んだ直線専用スピードトライアル車輌」から得られる要素は、非常に限定的だと思うんですよね…。

>通りすがりさん
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コメントありがとうございます。 ご指示通り公開せずに読ませて頂きました。
思うにヨーロッパの小規模メーカーの対応は、日本人の商道徳の想像を絶するものがあるようですね。 私もM5の純正部品の問い合わせと注文は何度も無視されたまま何一つ手に入らずに終わりました。
その他に何年も前の話ですけど、日本の業者さんがM5にローレーサー他数台の車体の注文を入れても「もっと台数が多くないと応じられない」と注文台数を吊り上げられた挙句、10数台も買わされた上に一番必要だったローレーサーは一台も送られて来なかったという話を聞いた事があります。
またこういう事はあまり書くべきではないのかもしれませんが、白人さんの中には未だに人種差別意識が強い人がいて、相手の人種次第では酷い扱いをする例が今でもありますから(事実、知人の家族が酷い目に逢っています…)、会った事のない人がどういう対応をするかは分かりませんしね…。
私はこれらの教訓から、今乗っているライトニングM5ローレーサーの性能は認めているものの、人様にM5の購入を薦める気は全然ありません…。
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Zockra Kouign AmannについてはGDFの後に製作に取り掛かったハイレーサー版とミッドレーサー版の製作も完了したみたいですね。 一貫してステアリングブロックとフレーム本体とのジョイント周りの開発に苦労した様子が見て取れますし、恐らく強度と剛性にウンザリするほどの苦労と課題があったものと推察しています。
だからと言って言い訳にはならないと思うのですが、何処の国でも〝職人″というものは誠意や姿勢など人としての対応がダメな人が多いですからねェ…(腕前や品質とは関係無く)。
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心中お察しします。 その上で期限までに(ちょっと位遅刻してでも…)仕上がって来る事をお祈りしています。
何しろ確かな物が仕上がりさえすれば、トロイテック・レボリューションをも凌駕する比類無き至高の一台が届く可能性があるのですから…。

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