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未来への遺産Ⅱ (中編)

Yおかさんの口から飛び出した「Force5はトラクションの掛かりが抜群にイイわ。 これだけは何ぼ鈍い俺でもハッキリと分かる。 車重の差で走りの良さはC.A.に軍配が上がるけど、トラクションの掛かりの良さだけならForce5はC.A.よりも上やな。 ずっと乗ってる俺が言うんだから間違いない」という言葉を聞いて以来、何かに取り憑かれたように寝る間も惜しんでRANS社H.P.のライブラリーに公開されている当時物の論説を訳読する日々が始まりました。

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実はこの時、既にForce5のトラクションの掛かりの良さに魅せられていた盛豚は「この車種をもっと深く理解したい」という思いから、今もRANS社H.P.のライブラリーに保管・公開されているシリーズ論説『Into the Ride Articles』のバックナンバーを探し出して、Force5に直接的・関節的を問わず関係する論説をポツポツと訳読し始めていたところでした。
Yおかさんのお話を伺っていると、その論説に記されていた開発談話や設計思想を裏付けるような経験論が次々に出てきたので、少なからず驚きをもって受け止めると共にその後も続けていくつかの論説を訳読しています。

まずは核心となる開発談話の長文を読み終えてそれらを意識しながらForce5に乗っては検証し、そうして感じた事を踏まえて論説を読み返し、これらを繰り返した後に頭の中で一通り整理し直したところ、論説に記述されていた事もみなまで書かれてはいなかった事の発見も含めて、色々な事が見えて来ました。

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論説の内容とYおかさんの経験論と自分自身の実体験を照らし合わせて鑑みるに、Force5のトラクションの掛かりの良さに寄与している代表的な要素として、下記の三つの事が挙げられるのではないかという考えに至りました。

①駆動側とリターン側のチェーンラインが直線的で交差していない事。

②航空技術を応用してストレート管のみで構成されたトラス構造のクロモリ製フレーム。

③エンド部の軸受けの位置がフレームのメインチューブの軸線付近にあり、チェーンステーがハブの推進方向の軸線付近に向かって伸びている事。

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①については前述の論説にも「駆動側とリターン側のアイドラーを分割してチェーンラインの屈折角を抑えて極力直線的に引く事により、チェーン長の短縮を含めたフリクションロスの少なさを狙った」と明記されています(アイドラーのマウントについても航空工学に基づいた強度の高い設計になっています)。
実際その効果を裏付けるかのように、他社品でも同様のチェーンラインを持つライトニング・P-38が「上りに強い」という定評で知られています。

(アイドラーが独立式でチェーンラインが交差しておらず〝上りに強い″P-38)
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②についても前述の論説の中で「力や負荷がフレーム全体へと均等に配分されて効率良く伝わるように、生産効率を優先したモノチューブフレームではなくトラス構造フレームを選び、更に筋交いを設置する事によって優れた剛性とパワー効率を確保しつつ、その恩恵を生かして肉薄化による軽量化を実現した。 また部材は全てストレート管としており、チェーン周辺のスペース対策には金属疲労を伴って撓り(パワーロス)の原因となる曲げ加工管ではなく楕円断面のストレート管を用いる事で、パワー効率の面と剛性の面でのロスを一切排除している」と記述されています。

③については論説の内容に盛豚の様々な経験に基づく解釈を加えた物なのですが、まず「推進力の伝達効率の面ではチェーンステーがハブから見てなるべく進行方向へ一直線に伸びているのが好ましい」と考えられます(自動車のドラッグレース車輌では近代的なサスペンションよりも、旧態依然とした4リンク式サスペンションの方が有利とされているのはその良い例です)。

※…(この考えに基づいた「ハブ軸から進行方向を向いてその正面に推進力の伝達路となる〝力の受け″の面がある事が重要である」という事については、以前述べた通りです)

また、ハブがフレームのメインチューブの軸線上からオフセットしてしまうほどにメインチューブへの力の伝達効率とダイレクト感にロスが生じてきますけど(立っている人を後ろから押す時に体の重心に近い腰の辺りを押せば相手を押し出し易いですけど、体の重心から遠い肩や腕を押しても体がぐにゃぐにゃ捩れたりするだけで相手を押し出せないのと同じ理屈です)、Force5のフレームを見てみるとハブがメインチューブの軸線付近に位置しています。

(黄色X印:ハブの位置。 緑線:推進力の方向。 青線:チェーンステーの軸線上にハブがあり、且つこの軸線とハブの推進力の方向となる緑線のベクトルが非常に近い。 赤線:ハブがメインチューブの軸線付近にある)
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③のチェーンステーに伝わった推進力を伝達する上で、②で述べたトラス構造のフレームが相乗効果を発揮します。 メインチューブに繋がるシートステーに伝わる力と並行して効率の良い方向に伸びたチェーンステーに伝わった力は、その先でヘッド部に繋がるダウンチューブやフレーム中央部に繋がる筋交いと接続しています。
筋交いはフレーム中央部にあるメインチューブの後端付近に接続しており、メインチューブ後端は筋交いに向かってその筋交いの角度に近い角度となる斜めにカットした上で隔壁を設置する事によって、メインチューブ後方に接続するシートステーから伝わって来る力も含めてメインチューブから筋交いへと力が入力される伝達効率が高くなっています(力は隔壁に沿って伝わるので隔壁に角度を付ける事によって狙った方向に力を伝えるという事については、件の論説に記述されていました。 これは航空工学のノウハウを応用した物みたいです)。

ダウンチューブはフレームの前方に・筋交いはフレームの中央部に力を伝えるので、ハブ軸からの推進力がダイレクト且つ均等にメインチューブ全体へと同時に(←ココ大事!)伝わり、フレーム全体を進行方向に向かって均等な力で且つ同時に(←ココ大事!)押し出します。 更に付け加えるならばクロモリ管は力の伝達効率に優れた特性を持つ材質です。

(Bの小さな筋交いと、その角度に応じて斜めにカットされたAのメインチューブ後端。 このAとBがForce5のトラスフレームの心臓部であり、秀逸なトラクションの鍵を握っている!)
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そしてそれら全ての部材がストレート管で構成されているので、そこには曲げ加工管のような撓り等のパワーロスやもたつきが一切生じません。
その結果ライダーが同じ動作・力でペダルを踏んでみても、通常のリカンベント・レーサーでは「少しもたつきつつ後ろの方から押し出される」という受動的な感触であるのに対して、Force5の場合は「機敏な反応で車体全体が一塊となって同時に進行方向へ飛び出す」という能動的な感触になります。 そのさまは前者の「力が後ハブからフレームの前方に向かって伝言ゲームのように伝わって行く」というモノとは違い、「ハブとフレーム各部がそれぞれ直結していて同時に発進している」というカンジがあります。
これこそが二台のForce5改700に試乗した時にトラクションの掛かりの良さの中に感じた不思議な感触の正体でした(お蔭で最近はローレーサーに乗るのが億劫で…sweat02)。

この航空工学のノウハウに基づいて力学的にも理に適った秀逸なフレーム構造に伝えられるハブの推進力は、チェーンの屈折角によるフリクションロスを可能な限り排除したチェーンラインの駆動によって生み出されています。
そりゃあ脚の力に対してダイレクト感が強くて、妙にトラクションの掛かりが良いのも頷けます…。

(推進力伝達の概念図:黄色の矢印は推進力がフレームを走って伝達する経路を示しており、C→D・F→Eへと伝わって行きます。 GはDがFを押す力であると同時に、FがDを引っ張る力でもあります。 曲げ加工管を使っておらず全てストレート管なのでダイレクトに力が伝わり、C・D・F・Eが同時に進行方向へと飛び出します)
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まさしく相乗効果といったところでしょう。 惜しむらくはエンド部のハブの軸受けの開き方向が地面やチェーンステーに対して垂直になっていない事ですが(チェーンステーに対して若干斜めの角度です)、フレームのメインチューブの軸線からハブを大きくオフセットさせない為には止むを得なかったのかもしれませんし(近年の車種ではエンド部を下方向にオフセットする事でスペースを稼ぎ、軸受けの開き方向を地面に対して垂直に近い角度にしているようです)、あるいは万が一のクイックリリース緩みや破損時におけるハブの脱落防止対策という狙いがあるのかもしれません(おそらく後者だと思いますけど…)。

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トラス構造によって前・後・中間が連結されたフレームワークは、ただトラクションに貢献しているだけではなく車体全体に一体感を与えており、荒れた路面や下り坂のワインディングや高速域での走行などでの挙動の乱れの原因となる捩れやウォブル(速度・他の走行負荷に対してフレーム剛性が限界を超えてしまい、揺さぶられるような振動を起こす現象)を抑制してくれる他、車体に一体的な荷重効果を発生させて高い安定感も与えてくれる考えています。

具体的に述べてみますと、前述の筋交いがトラス部の下側にあるチェーンステーとダウンチューブに接続しているお蔭で、ライダーの体重がメインチューブの中央に掛かってもトラスつまり三角構造効果で受け止めてメインチューブがグニャグニャと撓って荷重を逃がしてしまう事を防いでます。

(筋交いを中心に構成されたトラス部が荷重を受け止めて効率良く配分する…)
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そしてここからが肝心な事なのですが、メインチューブから荷重がエンド部とヘッド部に伝わる(下図の I 線とK線)のと並行して、筋交いに配分された荷重(下図のJ線)はトラス構造のボトム部(下図のFの部分)を経由して配分され、後側のチェーンステーがハブ軸へ(下図のL線)・ 前側のダウンチューブがヘッド部へ(下図のM線)と伝えられます。
これにより後ハブ(下図のC の部分)・シート(下図のDの部分)・ヘッド周り(下図のEの部分)の三箇所には常にバランス良く配分された荷重が同時に掛かり、フレームが受け止めた荷重は漏れなく前後の車輪を一体的な荷重効果で路面へとシッカリ押し付ける力として生かされている事が、実走の中でも体感できます(特にショートホイールベースでありながら急勾配の上り坂で前輪の荷重が抜けてしまい難い事については特筆に値します)。
そしてメインチューブの上にあるシート(下図のDの部分)よりも低い位置にあるトラス構造のボトム部分(下図のFの部分)を経由して配分された荷重(下図のL線とM線)は、メインチューブよりも低い位置から下方向に向かってぶら下がるように掛けられる荷重として作用する為、単純なシート高だけでは一概に測りきれない重心の低さと荷重の安定性を実現しています(個人的にはこの恩恵が最も有難いです)。

こうした荷重の配分が生み出す効果のお蔭で、シート高のわりに重心が低くて安定感が高いので、盛豚のように怖がりなライダーでも最初から安心して走る事ができました。 
車体全体が一塊となって同時に動く作用を生み出す負荷の配分効果は、トラクションが掛かる時の前進方向だけでなく、こうして走行中に荷重が掛かる縦方向においても寄与しており、挙動に一貫性を与えているのだと考えています。

(荷重伝達の概念図:Dに掛かるHの荷重は I ・J・Kへと配分され、Fに伝わったJはL・Mに配分されてLと I はCで合流・MとKはE で合流。 前者はC を路面に押し付ける荷重Nに・後者はE を路面に押し付ける荷重Oになり、結果C・D・E・Fに効率の良い荷重配分効果が得られて前後輪に効率良く荷重が掛かり、安定感が飛躍的に向上します)
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実は今回の記事がほぼ書き上がる頃に先日のリカンベントオフ会があり、Force5-XPスタンダード仕様の26インチバージョンに試乗させて頂ける機会に恵まれました。 こちらは盛豚のForce5改700に比べて明らかに前後の荷重バランスが良く、26インチホイールサイズによる重心の低さを差し引いて考えても、抜群の安定感を感じる事ができました(件の論説の中でRANS社のオーナーであるランディー・シュリッター氏が「ライダーがスプレットイーグルのポーズを取ったままコーナリングする事だってできる筈」と豪語していたのも頷けます)。

Force5改700の方がメインチューブの角度は僅かに前上がりになってしまっている分だけ、スタンダード仕様に比べれば相対的には前後輪の荷重バランスに偏りが生じているのは当たり前と言えば当たり前なのですが、大抵のスポーツ用自転車は前輪荷重がやや不足しているのに対して、スタンダード仕様Force5の場合は前後輪の荷重バランスと重心の低さが秀逸であり、操縦性における懐の深さが際立っています。

この試乗の機会を通じてランディー・シュリッター氏が意図していた物の真の姿を垣間見る事ができたと同時に、その設計思想をより深く理解できたのは非常に大きな収穫となりました。

(一見しただけでは俄に想像がつかない重心の低さと荷重バランスによって、抜群の安定感と操作性を発揮するスタンダード仕様のForce5)
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その一方でForce5改700も腰高なシート位置とは裏腹に意外と重心が低く、前後輪の荷重バランスでこそスタンダード仕様のForce5には譲るものの、前述のトラスフレームによる荷重の配分効果のお蔭で多少の上り坂でも前輪の荷重が抜けてしまってフラついたりする事はなく、シッカリと前後輪に荷重が掛かって優れた安定性を発揮してくれます。
そのお蔭でここ数年はローレーサーをメインに乗り継いできた盛豚でさえ、相対的に腰高なハイレーサーに不安を覚える事もなくすぐに馴染む事ができました。

まぁスタンダード仕様Force5とForce5改700では前後輪の荷重バランスが違うと言っても、こちらは操縦性に問題が生じるほど激しいわけではありませんので、慣れてしまえばこれはこれでホイールサイズの差による恩恵分とは別に前輪荷重が軽くなっている分も車速や加速力が上がるというメリットがありますから、一長一短で割り切れる範囲だと思っています(車体の前側の荷重を減らすと車速や加速力が上がるという事については、競艇やF1やドラッグレースに詳しい人ならご存知ですよね?)。

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その他のForce5のフレーム特性として、とにかく剛性が高いので基本的にウォブル(速度・他の走行負荷に対してフレーム剛性が限界を超えてしまい、継続的に揺さぶられるような振動を起こす現象)に悩まされる心配がないという事が挙げられます。
そして材質がクロモリである事も寄与しているせいか操縦性を乱すほどのジャダー(路面の凹凸から来る衝撃をろくに吸収せず弾き返す事を繰り返すばかりで、細かいバウンドを繰り返すような異常振動を起こす現象)に悩まされる事もほとんどありません。

フレーム剛性の高さ故に乗り心地が硬いという事についてはメーカーとしても自覚があるらしく、件の論説でも「硬いけれど操縦性に優れたBMWのサスペンションのようなモノです。 分厚いクッションを取り付けるのではなく、走り込んでその効果を理解した上で乗って下さい」と記述されていました。

(硬い、確かに硬い…)
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ウォブルが生じ難いというのは良い事なのですが、それが時には落とし穴を生む事もあります。 剛性の高さによって走行中に車体からライダーの体に伝わって来る音や振動が抑えられて少なくなるという事は、ともすれば体感速度と実速度に誤差を生みがちです。

その剛性の高さ故に下り坂等で速度が上がる時もスムーズに上がり過ぎてしまい、注意してサイコンに表示される速度を見ておかないと、思った以上に速度が上がっていて路面のギャップを越える時に驚かされる事もしばしばです。
気が付くと想像以上の速度になっているわ高速域での挙動にカミソリのような鋭さを感じるわで、いつの間にか盛豚の運転技量では路面状況に対して処理しきれない速度域になっている事もあるので、別の意味での怖さを感じる時があります…sweat02(その点は明らかに上級者用の車種なのでちょっと持て余し気味です…)

中・高速ワインディングでの運転技量が高いとは言えない盛豚のようなライダーが限界に挑んで捻じ伏せるように走ろうとすると、乗り手を選ぶじゃじゃ馬のように車体側が反発して来る事も予想されますが、自分で管理できる速度域を逸脱しないように注意してこちらが邪魔をせず車体に逆らわなければ、頼もしい剛性感でビシッと支えてくれるという安心感があり、少なくとも簡単にウォブルやジャダーが発生してしまうようなフレームとは違って、把握し易くて信頼できる挙動だと感じています。

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件の論説の中でランディー・シュリッター氏が「Force5の場合は可能な限りの軽さで極限の性能を得るべく、フレームのチューブ一本一本に極めて多くの思考を込めた」・「単純な構造物は単純な機能しか持たないが、ノウハウの深さに裏付けられて深く考え抜かれた上で生み出された奥が深い構造物は、奥が深くて多岐に亘る優れた機能を併せ持つ」という趣旨の表現をされていました。
確かにこうして自分が実走を通じて体感した物と件の論説の設計理論とを照らし合わせて、再び実走を通じて検証する事によってその先に見えて来る物を整理し直し、それを漠然とした認識から整然とした文章へと纏め上げて読み返してみるほどに、驚くほど多くの事が見えて来ます。

RANS社は元々RocketやV-Rex等の車種のようにストレート管を多用する傾向はありましたが、Force5ではたった一本の筋交いを加えるてやるという工夫で四角構造を〝三角構造の組み合わせ″に変えました。

※…(構造体は四角構造よりも三角構造の方が捩れが発生し難くて強度にも優れると言われています。 その為四角構造体の対角線に筋交いを加えて、「二つの三角構造体が隣接している状態」としてやる事で飛躍的に強度が上がるという事は、今日では建築業界の「家屋の柱の対角線に筋交いを加える耐震構造技術」というノウハウにも応用されており、我々の日常生活に恩恵をもたらして馴染み深い物になっています)

件の論説でも「配分」という言葉の他に「三角則」という言葉が度々出てきますが、こうして〝走って・読んで・考えて″のサイクルを三・四回繰り返してみると、たった一本の筋交いによってForce5のフレームワークの中に生み出された三角構造は、実に様々な恩恵をもたらしているのだという事が理解できました。

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ただしこのトラクションと荷重に関する効果は剛性面での効果とは異なり、トロイテック・レボリューションやシュリッター・アンコールの走りのように「劇的に他を凌駕する」という性質の物ではなく、「同等他者が苦手とする事を普通にこなしてしまう」という性質の物なので、試乗してみても気付かない人の方が多いかもしれません(その辺はNAKAGAWA LORO NL3の上りの良さに共通するモノがあります…)。
しかし乗り手によって分かろうと分かるまいと確かな事実としてその恩恵が存在しているという事については、Yおかさんの言葉が如実に物語っていると思います。

(借りて来ました。 住宅の三角則、『筋交い』)
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(借りて来ました。 自動車の三角則、〝ロールバー″の『ダイヤゴナル』)
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「理屈で語ると大仰で、作る手間も馬鹿にはならないのに、予備知識のないユーザーの手に渡ってしまうと彼等が実感できるモノは決して多くはない。 しかしそこには確かな事実として恩恵が存在する」というのは優れた工業製品の常です。
しかし希に理屈を知らないのにその恩恵を感じ取れた一握りのユーザーが、自分が感じ取ったモノを起点として遡り探求し始める事があります。 そしてその探求の果てにその製品へ込められていた設計理論や概念へと辿り着けた時には、手に入れた製品に対する満足や愛着そして喜びが倍増するというものです。

このように一つの製品から遡って探求していく遡行過程こそが、開発者と面談する機会を得られないユーザーに許されたささやかな楽しみの中の一つであり、ちょっとした冒険旅行なのではないでしょうか?
消費者は代金と引き換えに工業製品を手に入れて、それがリカンベント・レーサーだった場合は眺めて楽しんだり、遠くまで走って景色を楽しんだり、速く走って距離やタイムをマークして楽しんだり、レースで成績を上げて楽しんだりと、色々な楽しみ方があると言われています。
せっかくですからそれらを通じて「製作者が込めた声なきメッセージ」や、「組み上げたエンジニアが込めたモノ」等を探してみる事でもう一歩奥まで楽しんでみると、案外乗り飽きてきた愛車も輝きを取り戻して見えるものなのかもしれませんね。

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そしてこれほど多くの事に気付く事ができたと一瞬だけ思い上がった自分自身が、結局のところそれはつまりRANS社のノウハウの深さとランディー・シュリッター氏の思慮深さとの言わば掌の上で転がされているに過ぎないという事に気が付いて、心底脱帽した次第です…。
それどころかまだ件の論説の約読は半分も終わっていないので、自分がForce5に込められている物を全て理解し味わい尽くす日を迎えるには、一体どれだけの歳月を要するのか想像もつきません。

いやぁ、エライ車輌を手に入れてしまいました…。(苦笑)

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…と、ここまで書いたところでフッと思い出しました。

Force5改700を手に入れた時の 「こういうのは分かる人に乗って欲しいですから…」 というあの言葉を…。

あぁ、なるほど。 そういう事なのかもしれないなぁ…。

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もちろん盛豚のForce5の場合はサイクルショップ金太郎さんで組んで頂いた、フランジ幅の広いハブを使った32Hのタンジェント組みホイールが大きく寄与している事も付け加えなければなりません。 何しろこのホイールのお蔭でユーロメッシュシートに頼らずとも、Force5を一般道の路面でも250km以上のロングライドに乗り出す事ができるようになったのですから。

このホイールは注文時に体重や車重・走行条件・フレーム材質とそれが「リカンベントの中では硬いとされている」という事等を伝えて、諸刃の剣とも言えるフレーム剛性の高さに逆らわず寄り添うように、転がりの良さを確保しつつ剛性と路面追随性を両立してジャダーが出難いホイールに仕上げて貰いました(路面追随性がどれだけ重要かについては、自動車の『ビルシュタインのショックアブソーバー』をご存知の人なら良く分かりますよね?)。

(32Hタンジェント組みという構成が鍵を握る手組みホイール。 「軟らかい」ではなく「しなやか」で良く転がるホイールを組んで貰いました)
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それにしてもこれほど優秀なリカンベント・レーサーをリリースしていたにも拘らず、何故発売からたったの四年で廃盤・モデルチェンジしてしまったのでしょうか?

その詳細に関する考察については後編で述べてみたいと思います。

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コメント

この長文の考察は、同じ車種を所有しているものとして素晴らしい資料になります。
俺もForce5の購入前に、Rans社のWebサイトでForce5解説文読んでワクワクしながら実車の発売を待っていたんですが…もうすっかり忘れておりました(汗)

ところで、トラクションがかかった場合のフレームへの負荷のかかり方ですが、
後タイヤが路面を蹴る接地点を起点にする考えも考慮するべきかと思います。
フレームを前進させる力は確かに後ハブ支持点からなのですが、車体全てを動かす力は後タイヤ接地点から発生しているからです。
その場合、駆動力は後タイヤ接地点から後ホイルとフレームを介して重心にかかります。
駆動力は重心を前方へ進めるとともに押し下げる様にも作用するので、最終的にはステアリグヘッドを斜め前方に押し下げる力として働きます。
なので、後輪タイヤ接地点を起点にトラクションを考察する場合、後輪タイヤ接地点と重心を結ぶライン・後輪タイヤ接地点とステアリングヘッドを結ぶライン・重心とステアリングヘッドを結ぶラインの三角形の変形として考察する事になります。
Force5のステアリングヘッドから下に向かってトラスを組む構造は、駆動力がかかった時のフレーム変形を考慮したものではないかとも思います。
実際に、ステアリングヘッド下側から延びる細いパイプの延長線は、後輪タイヤ接地点に向かっていますし。
(このパイプが“後輪タイヤ接地点とステアリングヘッドを結ぶライン”より内側だと、フレームには捩じる力がかかりやすくなるはず)

こうやってForce5の様に良く考えられたフレームを眺めて色々考えるのは面白いですよね。
同じアプローチの鋼パイプ・トラス構造のリカンベントがもっと多いと、色々比較できるのですが…Rans社以外ではナカガワとP38位しか無いのが残念…。

>ツカモトさん
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あの論説をあの当時にリアルタイムで読んでらっしゃったという事が羨ましいですわ~。
丁寧な補足とご教授、ありがとうございます。 こうして考察を巡らせては意見を交換するほどに、つくづくForce5の奥の深さを思い知らされますね! 十年遅れのデビューではありましたが私もForce5のオーナーとなれた事によって、未知の経験とそれまでは想像する事すらできなかったノウハウの一端を学ぶ機会を得られ、リカンベントに対する理解と認識が深まる事に大きな喜びを得られました。
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Force5改700のカスタム仕様を設計・オーダーして道を付けて下さったツカモトさんと、今日まで大切に保存し続けて最後に私の手に託して下さった現在のLOROワールドリカンベンツさんのスタッフの方に、改めて感謝です。 ( ^ω^ )ノ

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