最近のトラックバック

« リカンベントオフ会2016 | トップページ | 未来への遺産Ⅱ (中編) »

未来への遺産Ⅱ (前編)

かつて自転車工学だけでなく航空工学のノウハウをも注ぎ込んで作られた市販リカンベント・レーサーが何車種か存在しました。 そしてそれら各々の一点に秀でた長所を全て併せ持つ、当時としては究極の一台として作られた意欲作が RANS Force5 です。

16051200

.
自分の愛車が対象に含まれる車種を持ち上げるような文章を書くのはあまり気が進まなかったのですが、思うところがあってこの車種についても今の内に書き綴っておく事にしました。

.

.

---------------

.

盛豚は個人的に「乗り味や走行性能が極めて秀逸なリカンベント・レーサーとは、得てしてフレーム材質に際立った特性のある物が使われているか、もしくはフレームと駆動系の構造に際立った特徴を持っている傾向がある」と考えています。
これは今までに試乗・所有を合わせて70台近くのリカンベントに乗った経験に基づく自論です。

昨今の樹脂とカーボンファイバーの複合素材であるCFRP製フレームの車種の軽さには目を見張るモノがあり、その効果については疑う余地もありません。 その一方でベーシックな金属製フレームの車種の中にも「理に適っていて秀逸な構造を持ち、CFRP製フレームの車種に比べれば地味ながら秀逸な走りをするリカンベント・レーサー」という物が希に存在します。

後者のような〝材質よりも構造に秀でている高性能なリカンベント″は金属製フレーム車なりの車重故に今日では気付く人が多くはないものの、実走してみると車重に対して説明のつかないような走行性能を発揮するので、車重の影響に惑わされない鋭い感覚を持つ人には分かる、決して色褪せる事のない乗り味・走行性能が味わえると考えています。

.

今回採り上げるリカンベント・レーサーは盛豚が二台合わせて四回の試乗を経験し、後に自らも手に入れる事になった RANS Force5 です。 この車種は2004年に発売されたRANS社の意欲作でしたが、発売から僅か四年で廃盤になってしまい現在では入手困難となっています。

(手前の一台がForce5-XP、奥の三台がForce5改700)
16051201 

厳密に言えばこれら三台の個体は、650C及び26インチホイール対応車種であるForce5スタンダードサイズのフレームキットを輸入して、それをベースに700Cサイズのホイールに対応するべく、フレーム加工を施してリヤブレーキの台座を移設しフロントフォークを交換する等、大幅に手を加えて製作された特殊なカスタムメイド車のForce5改700です(海外でも同様の改造例は複数あるようです…)。

Force5改700はスタンダード仕様のForce5に比べるとフロント側がやや持ち上がったジオメトリーになっており、その分加重バランスは前輪側が少し軽くて後輪側が少し重くなっています。

(手前がスタンダード仕様で奥がForce5改700。 メインチューブの角度の違いに注目!)
16051205 

これはハイレーサーに造詣が深くて同じ地域ではその道の第一人者とも言えるツカモトさんが、約十年前に当時のLOROワールドリカンベンツさんへ特別注文された物であり、その為にご自身でキャスター角・オフセット量の他に重心バランスを計算してジオメトリーを描き直し、パーツの選定を含め仕様を設計するのには色々な苦労があったと聞き及んでいます。

(『エチトン号』こと〝オリジナル″全てはここから始まった…)
16051202 

この時に持ち込まれたForce5改700の仕様設計が完成度の高い物であった事から、「これ一台だけで終わらせるのは勿体無い」と思ったのか当時の製作スタッフの方がこの仕様設計を応用して、この〝オリジナル(仮称)″と同様の700C仕様カスタムメイド車輌を製作・販売された物が、Yおかさんの〝2号車(仮称)″と盛豚の〝3号車(仮称)″でした。

(トップロードハンドル仕様が美しい〝2号車″)
16051203 

これらはフレーム加工こそ同時に行われたものの、一度にまとめて組み上げられたのではなく順次製作・販売されたようです。 軽量化に関する仕様設計についてもかなりの入れ込みようで、コンポーネンツにも〝オリジナル″~〝3号車″まで一貫して軽量パーツがふんだんに使われており、一説には仕様によって車重が11kgを切っていると発表されていた例もあったようです(自転車業界の〝車重″ですから、ペダル・タイヤ・ワイヤー類なしでの数値でしょうけど…)。
ちなみに盛豚の3号車は納車時の仕様にペダルを付けたネット重量で12kgジャストでした。

とにかくかなりの本気度で製作されたという事だけは間違いなさそうです。

(ベーシックなシルエットの〝3号車″も、確かにクロモリ製レーサーとしては軽い…)
16051204 

初めて試乗させて頂いたのはツカモトさんの〝オリジナル″だったのですが、一回目に試乗させて頂いた当時は盛豚もまだビギナーだったせいか、着座しただけで勝手に動き出すほどの転がりの軽さに圧倒されてしまい、「油断も隙もあったもんじゃない車輌だな…sweat02」とビビリまくったのを憶えています。
また、腰高なシート高とは裏腹に思ったよりも重心が低く感じられて妙に安定感があり、ビギナー時代だったにも拘らず特にフラつく事もなく乗れたのが印象的でした。

二回目に試乗させて頂いた頃には既にローレーサーに乗り慣れていた事もあり、それなりに味わって後に感想を書く位の余裕はありました。 実はペダルの踏み込みに対して車体が前に進む時に不思議な感触があったのですが、上手く言葉には言い表せないというか十分に理解できておらず言葉で説明できなかった事と、二回とも車道ではなく広場での試乗だったので車速を上げて真価を確かめるには至らなかった事から、本文中ではその事について触れていませんでした。

(それでもその走行性能の片鱗は十分に伝わって来ました…)
16051206 

次に試乗させて頂いたのはYおかさんの〝2号車″だったのですが、一回目はトップロードハンドル仕様だった頃で二回目はオープンハンドル仕様になった直後でした。
こちらはそれなりに広い車道やCRで試乗できたのでそれなりに飛ばして走らせたのですが、「ローレーサーと比べると空力的に不利だから中~高速域の伸びは期待できないだろうな…」という事前の予想に対して、まず最初にトラクションの掛かりが良くてペダルの踏み込みに対する車体の進み方の感触に他の車種とは違う不思議な印象を受けました。 そして重量級のホイールの影響もあってそのままローレーサーのように車速が伸びるのでビビッたのを憶えています。

(ローレーサー張りに走るので、盛豚のハイレーサーに対する認識を変えた一台でした)
16051207 

この二台合わせて四回の試乗を通じて非常に印象に残ったのは〝トラクションの掛かりの良さ″と、〝その感触に何か不思議なモノがある″という事でした。 後に自分自身が〝3号車″を手に入れた時も、店頭で受け取って自走で帰宅する時の最初の一漕ぎ目で、ペダルに足をかけただけで「クン…」と車体が勝手に動き出したので、改めてForce5改700のトラクションの掛かりの良さにビビると同時に感動したのを良く憶えています。

やがて乗り込むほどにこのトラクションの掛かりの良さに魅せられて、Force5に夢中になっていきました…。

(そりゃあもうローレーサーに乗るのが億劫になってしまうほど気持ちイイので…)
16051208 

トラクションとは自動車業界を中心に用いられている用語で、自転車用語で言うところの〝反応性″に近いモノがありますがもっと具体的な意味を持つ概念であり、直訳すれば〝牽引効果″という事になります。 もう少し噛み砕いた表現に置き換えると〝動力源からの出力が駆動系を通じて車輪に伝わり、車輪が路面を捉えてその力を伝える事によって、車体が進行方向へ進む事″を意味します。
その構成要素には動力源の出力・駆動系の伝達効率とその過程で発生するフリクションロス(摩擦抵抗の事ね…)の影響・車輪が路面を捉えるグリップ力と車輪の回転方向の剛性及びパワー伝達効率と路面追随性・サスペンション(自転車の場合はフレーム&フォークとホイールのサスペンション効果)による荷重効果と路面追随性・シャーシ(自転車の場合はフレーム&フォーク)の剛性とパワー伝達効果・他、実に様々な要素があり、これらが複合的に関連し合う事で成り立っています。

※…(自転車の場合はフレーム・フォーク・ホイールがサスペンションやシャーシ等複数の役割りを兼務している形になりますね)

.

盛豚はForce5以外のハイレーサーを所有した事がないので、Force5について「そもそもハイレーサー自体がローレーサーに比べてダイレクト感の強いリカンベント・レーサーだけど、これほど出足のダルさが少なくてやたらとトラクションの掛かりが良かったかなぁ…?」とうっすらぼんやり考え始めていた程度だったのですが、ある日 Force5改700 と Bacchetta C.A. 2.0 の二台のハイレーサーを所有されているYおかさんとフレーム談義に興じていたところ、トラクションの話題には触れていなかったのに突然その口から「Force5はトラクションの掛かりが抜群にイイわ。 これだけは何ぼ鈍い俺でもハッキリと分かる。 車重の差で走りの良さはC.A.に軍配が上がるけど、トラクションの掛かりの良さだけならForce5はC.A.よりも上やな。 ずっと乗ってる俺が言うんだから間違いない」という爆弾発言が飛び出しました。

(集合場所で朝飯を食べながらフレーム談義をしていると、突然予期せぬ爆弾発言が…!)
16051209 

そしてこのYおかさんの言葉は、盛豚にとってまさに天啓とも言える意味を持つ事になるのです…。

その詳細については次回の中編で述べてみたいと思います。

.

« リカンベントオフ会2016 | トップページ | 未来への遺産Ⅱ (中編) »

リカンベント」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

2017年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ