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リカンベント・ローレーサーのクランクヒット対策

リカンベント・ローレーサーを所有している日本人ベントライダーさんの中には、何らかのクランクヒット対策を講じている方も少なくないようです。

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人類の身体条件は民族によってある程度異なる特徴・一定の傾向を持っていると言われていますが、ローレーサーの故郷とも云えるオランダの民族的な特徴として、非常に長身であるという事が挙げられます。

それについてはサッカーやスピードスケートに詳しい人ならよくご存知だと思いますが、オランダ人のオリンピックやプロスポーツ選手の平均身長は一説には約2m以上だとも言われており、しかも日本人に比べて身長比率の脚の長さが際立ちます。

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リカンベント・ローレーサーは主にオランダの競技用クローズド・コースを舞台として開発された特殊な車輌で、「可能な限り全高を低く抑える事によって高い空力特性とスピードを追求した、競技用リカンベント」です。

具体的にはまず後輪をライダーの後方へと押しやり、ホイールベースを伸ばす事でその間にライダーの体の大半を収めています。 また小径な前輪とメインフレームのダウンチューブから前半分をライダーの股間~足首の間に挟むように収めて乗る乗車姿勢になります。

(アップライト車でいうところのダウンチューブったら、ローレーサーの場合は下の青い線で囲まれた辺りね…)
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これに大抵のオランダ人ベントライダーが乗ると、そのままペダリングしても足が上死点に来た時でさえクランクが前輪に干渉する事はまずないようです。

(借りてきました。 それにしても脚長ェなオイ…sweat01
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ところがそんな民族が生み出したローレーサーに日本人ベントライダーが乗ってポジションを合わせると、オランダ人ベントライダーの場合に比べてブームを短く引き寄せた状態になりがちです。 その為ペダルが上死点に来た時にライダーの踵だけでなくヘタをするとクランクそのもののペダル付近が前輪とオーバーラップしてしまうケースもあります。

それがタイミング悪く走行中にハンドルを切っている時だった場合は、ライダーの踵と前輪が衝突する〝ヒールヒット″が発生したり、更に運悪くクランクが走行中の前輪に衝突してしまう〝クランクヒット″が発生してしまう事になります。

走行中にクランクヒットが発生すると突然車体のバランスを著しく崩してしまいますし、最悪の場合は即転倒に繋がるケースがありますので大変危険です。 ヒールヒットについてはまだ運転技術の問題だと言えなくもないのですが、クランクヒットが発生するのであればそれは車体のポジションセッティングに欠陥があると言わざるを得ません。

実は盛豚もLM5を手に入れてすぐの頃にフォークを加工へ出して再度組み付けるまでの一週間は、一時的に全長の短い予備のフォークを入れて乗っていたら走行中にクランクヒットして吹っ飛んでしまい、危うくR2で転倒するところだったという経験があります。

(この全長の短いオフセットフォークだとクランクヒットしてしまい、死ぬかと思いましたよ…sweat02
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販売店が新車を販売する時にはそれが店頭での引き渡しであれ通販であれ、顧客のXシームを確認してある程度ポジションを調整してから引き渡す筈ですから、クランクヒットが発生する可能性がある場合は引き渡し前に把握できるものです。

(メーカーサイトより借りてきました。 これがXシームです。 ベントライダーなら自分のXシームは測って把握しておきたいですね)
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盛豚が日頃お世話になっている二軒の誠実なプロショップでは、受注時に顧客の身長とXシームを予め確認されています。
それによってクランクヒットの可能性が予見される場合については、シートとマウントを固定するボルト穴を開け直したりシートそのものを加工したりして、シートを前進させる事でその分ブームを前に向かって伸ばすなど、クランクヒットしないように対策してから出荷されているのを時々見かけます。

もしそうした対策を講じてもクランクヒットを回避できる見込みが立ちそうにない場合は、その車種の注文を黙って受注したりせず顧客にその旨を説明した上で、その顧客のXシームでもクランクヒットが発生しないようなジオメトリーの車種を提案して薦めるなど、とにかくクランクヒットがタブーである事をよく理解して対応されているのを何度も目にしてきました。

※…(プロショップの価値というのは販売価格の安さとかではなく、こういう所にあると思うんですよね。 まぁ、責任あるプロショップなら当然の対応だと言われればそれまでなんですけど…)

(画像の遠近感の関係で黄色いローレーサーのクランクがヒットしそうに見えますが、実車はクランクヒットしてませんでした。 念の為…)
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しかし新車ではなく中古車の個人売買などで購入されるケースについてはこの限りではなく、購入されたベントライダーさんが個人レベルでクランクヒット対策を試行錯誤されている例も何度か見てきました。
かく言う盛豚もクランクヒット対策ではなく荷重バランスの調整という動機ではありますが、シートを加工して前後位置を調整した経験があります。

この手の加工でよく見かけるのは、シートに開けられたマウント取り付けボルト用の穴を開け直す事によって、シートの位置を前方へと移動させる方法です。
ただしシートを前に移動してブームも伸ばすという事は、必然的にチェーン長も長くなる事を意味しますので、実際に作業する時にはチェーンのコマも足せるように用意しておく必要があります。

(前側が従来のマウント取り付けボルト用の穴で、後ろ二つが後から開けた穴です。 ボルトを一旦外して後ろの穴の方に固定し直せばその分だけシートやブームを前に移動できるので、クランクヒット対策になります)
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この時に前方へ移動したシートの先端部がメインフレームのダウンチューブに干渉してしまうのを回避する為に、シートの先端部を四角形やV字形やカマボコ形に切り取っている例もよく見かけます。
幅方向はメインフレームのダウンチューブの外径+約1cm、前後方向は場合にもよりますが約5~8cm切り取っているケースが多かったように思います。

(クランクヒット対策の一例。 こうしてフレームと干渉する部分をカットしてその分シートとブームを前に出します。 あまり大きく切り取り過ぎるとマウントボルトの穴との間にクラックが入る恐れがあるので、注意が必要です)
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これだけやってもギリギリのところで僅かにクランクヒットを解消できないという場合には、ビンディングシューズの本体とクリートの間にスペーサーを噛ませたり、シートクッションを工夫する事で対処されている例もあります。

後者については既存のシートクッションとシートシェルの間にホームセンターで売っている固めのスポンジシートを挟むケースもあれば、ベンチシット社製のメッシュシートクッション(パッと見はPerformer社純正品も似ていますがこちらはペラペラですぐにヘタってしまうのに対して、ベンチシット社製は腰が強くてヘタリ難く、一層あたり1cm厚の二層品と三層品の二種類があります)を装着したりするなど、様々な選択肢と工夫例があります。

※…(ベンチシット社製メッシュシートクッションには寸法・形状に複数の種類があります。 お求め・お問い合わせはHC-WORKSさんまで)

(ベンチシット社製メッシュシートクッションは腰が強いので、ライダーが乗ったくらいではへしゃげたりつぶれたりしません。 三層クッションの側は二層と同じ物ですが実はこの中にもう一層シートが入ってます)
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特にベンチシット社の三層メッシュシートクッションについては、裏面の接着部をちょっとだけ切って中に入っているアンコの一層を取り出し、これを切って都合の良いように重ね合わせを調整したりしてから中に戻す事で、部位によって二層から三層にでも四層にでも五層にでも出来るので、細かい厚みとフィッティングの調整にはとても便利です。

※…(詳細は過去記事を参照)

中の一層を取り出す時に裏面を切り開いた部分については後でタイラップで括っておいてやればバラける事はありませんし(盛豚は何年もこのままの状態でLYNXXやLM5に乗っていますが、全く解けたりしていません)、中層を切って重ね合わせを調整して作ったアンコもタイラップでちょいちょいと位置決め程度に括ってやれば、使っている最中にずれてくる事もありません。

こうして中層を細工してシートの前側を二層に・ボトム部と腰の辺りを三層に・肩甲骨の辺りを四層にしてやると、シートシェルの位置を変動かさなくてもライダーの体を約3~5cm位は前に出す事ができますので、更にブームを伸ばす事が出来ます。

※…(あまり気付かれていない事かもしれませんが、メインフレームのダウンチューブは垂直ではなく斜めになっていますから、シート高やライダーの着座位置の高さを真上に上げるとフレームとシートの隙間が広がるので、その分だけシートを前に出す事ができます。 つまりシート高やライダーの着座位置を2~3cm上に上げる毎に約1cmシートとブームを前に出してクランクヒット対策をする事ができるという訳です)

(重ね合わせ調整を施したシートクッションです。 黄色の部分はアンコ抜きした二層。 緑の部分は標準の三層。 青の部分は重ね合わせを組み替えた四層になっています。 シートクッションがなかった時に比べてライダーの体とブームが赤い矢印のように前方へと移動しており、クランクヒット対策になっています)
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「1cmでも着座面を下げたい」とシート高の低さに拘るのであれば話は別ですが、車種によっては条件が揃えばメーカー出荷状態との対比で最大10cm前後は着座位置を前に出す事ができるケースもあります。
しかしシートの先端部をあまり大きく切り取り過ぎてボトム部まで達してしまうと、シートシェルの強度が落ちてしまうなどのトラブルが発生する恐れがありますので、やり過ぎにはご注意下さい。

※…(もし加工される場合は自己責任で慎重にお願いします)

ちなみに身長173cm・体重74kgの盛豚がChinaMascotProducts LOW-RACER を手に入れた時に付いていたPerformer社製FRPシートを加工して位置を調整するにあたり、先端部を約8cmほど切り取ってその分だけシート位置を前に移動して乗っていましたが、新たに開けたボルト穴と切り取った部分に十分な距離を確保していた事もあって、シートシェルが割れるなどのトラブルはついに発生しませんでした。

(上が加工前、下が加工後。 前輪との前後位置関係に注意して見てみると、シートがどれだけ前に出ているのかが見て取れます)
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もし所有するローレーサーのクランクヒットを完全には解消できておらず、不安を抱えたまま乗ってられる方がいらっしゃいましたら、一日も早く対策を講じられる事をお勧めします。

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※…(FRPの切削加工については粉塵が発生するので注意が必要です。 人間が肺に吸い込んでしまうと二度と取り出せないので呼吸器系・他の健康に悪影響を及ぼす恐れがありますから、ルーセンを吹きつけて粉塵を回収しながら切削するなどして、空気中に粉塵が飛散しないように対策しながら作業して下さい)

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