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自家用車と福祉車両 5(福祉車両の種類と仕様選び②『サイドリフトアップシート仕様』)

車椅子仕様の福祉車両について大まかに把握できたお陰で、この時点で私が車に乗せて送迎する対象者には車椅子生活や寝たきり生活を送っている人は見当たらない事を考慮した結果、今回は車椅子仕様については検討対象から外してもいいだろうと判断できました。

なお この記事は実際に福祉車両購入・検討の必要に迫られてきて困ってらっしゃる方(できれば自動車メーカー各社にも…)の目にとまって少しでも参考になってくれたらという願いを込めて書いています。 もし私が既に気づいているウィークポイントなどを隠して都合のいい部分ばかり書いてしまったら、参考に読んで下さった方々が「後で買ってからあんな事やこんな事が発覚した。 こんな筈じゃなかったのに…」などということになってしまうかもしれないので、そんなことにならないようにという意味を込めて自分の経験を踏まえて思った事を忌憚なく述べてみたいと思います…。

(自分の場合だとこの仕様は選ばなくてもいいと判断しました)
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どうやら私の場合はサイドリフトアップシート仕様で事は済みそうです。
そこで日を改めてトヨタハートフルプラザ神戸(同社の福祉車両専門のショールームです)さんへ行って実車を確認したところ概ね満足いく内容だった事に加えて、幸いにも元々トヨタ ヴォクシー・エスクァイアを含むノア系三車種の三列目シートの後ろには折り畳んだ車椅子を搭載できるスペースがあることが確認できたので、手持ちの車椅子をここに常備搭載する前提であとは私自身が介護講習を受けて立ち上がり・着座介護をマスターしておくことによって、万一対象者が体調を崩したり先々車椅子生活を余儀なくされた場合には私と車椅子と車両のサイドリフトアップシート機構で乗り降りの介護をこなすというビジョンが浮かんできました。

(ノア系三車種は元々ここに車椅子を積載する事を想定して設計されています)
Img_0751


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これは後日になって分かったことなのですが…
介護講習で講師の方や介護職に従事している友人から福祉車両について指摘された内容にはある共通点がありました。 それは「老々介護みたいに介護者の体力的にやむを得ない場合でないのなら、人を車椅子にのせたまま丸ごと自動車に乗せるのは本人の負担軽減を後回しにした方法であり、それは好ましくないというかあくまで最後の手段である」というものでした。

冷静に考えれば分かることですが、まず車椅子の板切れみたいなゴツい布一枚の座面とソファーのように分厚い乗用車のセミバケットシートでは、座り心地があまりにも違い過ぎます。 また前者と後者では体のホールド性にも雲泥の差があるので、身体機能が健常に近い状態を維持できている一部の対象者以外の体幹に力の入りにくい高齢者や障がい者の場合は、車椅子ごと乗り込んだ状態では走行中の前後左右方向の揺れに対して十分に対応できません。
そんな過酷な仕打ちをするのか? というハナシです。

前述の二人からは「施設の送迎など限られた時間と人員などの条件下で一度に多人数を移動させなければならない場合でもない限り、いやそういう場合でさえ極力ちゃんとした乗用車のシートに乗せて差し上げるべきなのだ」と懇々と説教されてしまいました…(実際、先ごろ寝たきりの高齢者を乗せて移動する機会があったのですが、サイドリフトアップシート仕様でさえ走行中は隣の席に介助者が座って身体を支えて差し上げなくてはならなかったので、後日に姿勢支持用の介護用品を買い足しました…)。

今になって振り返るとこの時サイドリフトアップシート仕様に目をつけたのは、方向性としてはあながち見当違いでもなかったようです…。

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サイドリフトアップシート機構搭載車は同等他社品にも用意されており、一見似ているようで実はそれぞれの作りと作動幅は異なりますがどれも耐荷重は約100kgまで対応できます。 それを支える為にこの機構の台座をシャーシにしっかり固定するべくフロア下に頑丈なメンバーを取り付けて搭載されている関係から、ハイブリッド車の場合は電池が搭載されているスペースとこのメンバーが干渉してしまう為、トヨタ ノア系三車種に限らず ホンダ ステップワゴン についてもハイブリッド車を選ぶ事ができません(日産セレナSハイブリッドと称する『スマートハイブリッド車』とは、正確にはハイブリッド車ではないのでここでは論じないでおきます)。

私はハイブリッド車が欲しかったのでダメ元でメーカーに特注を打診して貰ったのですが、こればかりは件の優秀な担当の方をもってしてもすぐにはメーカーから良い返事を引き出すことができず、納期がやたらと延びたりするのは避けたかったことや月次注文の締め切りも目前に迫っていたことから、ハイブリッド車は諦めることにしました。

またサイドリフトアップシートは前述の通りその台座がフロアに固定されてしまっているので、このクラスのミニバンの大きなセールスポイントの一つである「広い車内空間を生かした多彩なシートアレンジ」ができなくなってしまいます(台座よりも上の本体部分が少しだけ前後にスライドする程度です)。
ある意味「今時のミニバンならではの最大の魅力が台無し」になってしまう訳ですが、目的が目的なのでその辺は割り切ることにしました。(苦笑)

(サイドリフトアップシートは下の台座がフロアに固定されているので、ほとんど前後にスライドできません…)
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ここまで考え抜いて有力候補に挙げたサイドリフトアップシート仕様ですが、「サイドリフトアップシートAssyはどうせ同じ製造元から同じ物が供給されているんだろう」と思いきや、各メーカーの車両を乗り比べてみると意外にも作動幅や乗り心地や使い勝手に結構な違いがあることが判明しました。

サイドリフトアップシートの台座には耐荷重が100kgもあるゴツい電動式のクレーンみたいなリフター機構が内蔵されています。 その分だけシート下のスペースを取られてしまうことからシート座面の中身のクッションが標準仕様に比べて薄くなってしまうらしく、標準仕様シートに比べるとどうしても乗り心地が硬くなってしまいます。
ショールームで実車に座ってみただけでは全然気づかなかったのですが、車両を購入してから人に運転してもらって二列目左側のサイドリフトアップシートと右側の標準仕様シートを乗り比べてみたところ、サイドリフトアップシートのあまりの乗り心地の硬さに耐えきれずカー用品店に社外品のシートクッションを買いに行って付け加えたほどでした(ちなみにこれでも私は足周りを固めてフルバケットシートを入れたチューニングカーを15年ほど運転していた経歴の持ち主です…)


これを踏まえて私が トヨタ ノア系三車種 と日産セレナと ホンダ ステップワゴン でサイドリフトアップシートを座り比べた主観的な感想を述べてみますと…
※ …(貶すつもりはないのですが具体的に検討されている方々にとっては深刻な問題ですし、少しでも参考になればと思いますので率直な感想を書きます)

座り心地はホンダ社の物が明らかに優れていて、トヨタ社と日産社の物はカー用品店で売っている社外品のシートクッションを上から敷いてやらなければ耐えられないほど乗り心地が硬かったです(ただしホンダ社のシートは他社品に比べてヘタリ易い傾向があるので、長い目で見ると一概に高評価とも言い難いところです。 ちなみにトヨタ社について盛豚のノアには現在シートクッションを二枚敷いてありますが、更なる追加を検討中です…)。

(ホンダ社のサイドリフトアップシートは他社品と違い、座り心地は硬くなくて快適ですが…)
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次に作動幅についてですが…
シートの前後方向へのスライド幅は日産セレナの物が大きくて三列目への乗り込みも普通にこなせましたが、 ホンダ ステップワゴン の物はスライド幅がこれよりも若干小さく、トヨタ ノア に至っては更に小さくて三列目への乗り込みは中央部のウォークスルーからの方が現実的でした。

( ノア系三車種の場合はサイドリフトアップシートを一番前までスライドしてリクライムを一番前まで倒してもこの状態なので、このシートの左側を通って三列目シートに乗り込むのはちょっと困難です…)
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また、身長173cmの私がサイドリフトアップシートに座った状態で乗降装置を作動させた際に、身体の周りに適切なスペースが確保されているかどうかについて確認したところ、一部のセダンクラスでピラーに頭がぶつかって痛い目に遭ったのとは対象的に頭部周りについては概ね良好でしたが、その一方で足元については課題が残りました。

身長173cm・靴のサイズが26.5cmの私が座って試したところ、トヨタ ノア と ホンダ ステップワゴン の場合は意識して靴のかかとを目一杯後ろに引いて脚を縮こまらせた少々窮屈な状態で、シートが左向きに回転する際に靴の爪先とドア前部ピラーの隙間が4cm位しかないのです…。

(これから述べますが、このピラーと足のクリアランスは 介護と安全という意味では不十分です)
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健常者と違って要介護対象者となる高齢者や障がい者とか病人の場合はこのように脚を縮こまらせた姿勢を取ることが困難であるケースは非常に多いので、何も考えずに漠然と座らせたまま作動させてしまうと爪先がピラーに干渉して足首を巻き込んでしまい捻挫や下手をすると骨折などの大怪我をする恐れがあるので、彼らを乗せた状態で作動させるには十分な注意が必要です。

実際、これまでに高齢者や寝たきりの要介護者などを何人も乗せたことがある私の経験談として言えるのですが、彼らを着座させてこちらが介助して脚を縮こまらせた姿勢にしておいて差し上げても、脚を縮こまらせた姿勢は本人にとって苦しいらしくて無意識に抵抗するかのように足を少し前に滑り出させてしまう為、トヨタ ノア を含むミニバンのようなドア開口部がとても広い車種ですらサイドリフトアップシートを作動させると足がピラーに干渉してしまいました。
その為足がピラーを通り抜ける時に一旦作動を停止させて、足の位置を修正したりそのまま支え続けたりするなどの介助をして差し上げることは毎回必須の作業となり、この作業を行わないで済んだことは一度もありませんでした。

これは言い方を変えれば彼らをただ座らせただけで何も考えずにサイドリフトアップシートを作動させてしまうと、ほぼ百発百中で大怪我をさせてしまう可能性があるということを意味します。
サイドリフトアップシートは確かにとても便利な機構ではありますがまだまだ完成の域にはほど遠くて、各社とも現時点では無条件に完璧な機構ではないのだと理解できて良い勉強になりました。


その一方で日産セレナの場合はピラーと足のクリアランスは10cm位ありました。 万が一の作動中の足とピラーの干渉・巻き込み事故を考えると隙間の広さだけを考えれば日産セレナの方が好ましいのは言うまでもありません。
しかしながら日産セレナの場合は足を乗せるステップが非常に短く、健常者の私が意識して目一杯かかとを後ろに引いて足を乗せても土踏まずから先(靴の全長の半分ほど)はステップからはみ出してしまいました。 何も考えずに漠然と座った状態ではステップから足を踏み外してしまう事もあったので、作動中の安全の為に必要な安定した姿勢を維持する上では、ステップの寸法・形状に見直しの余地があると感じます。

これに対して トヨタ ノア と ホンダ ステップワゴン の場合はステップがもう少し長くて靴の全長の6〜70%ほどは乗せられました。
でもこれでも決して十分とは言えません。 何故なら高齢者や障がい者や体調を崩している人にとっては膝や大腿部を90度やそれ以上の角度まで曲げることは意外と苦痛を伴ったり、人によってはそこまで曲げられないケースも多いからです(健常者の方にはピンと来ないことかもしれませんが、年老いてくると足腰の関節が自由に動かなくなってきて階段を上ったりしゃがんだり高さが低い椅子に座ったりする事が困難になってきます…)。

これについてはメーカー各社の言い分としては「適切に運用して下さい」といったところなのでしょうが、健常者目線の押し付けはいけません。
そもそも大前提としてサイドリフトアップシート仕様車は福祉車両なのですから、高齢者や障がい者を乗せる為にも「身体の不自由な方々が自動車に合わせるよう無理強いをするのではなく、福祉車両であるからには自動車が身体の不自由な方に合わせるようメーカーが隅々まで見落としなく設計し直すのが筋であり、それがメーカーの使命というか責任である」と思います。

その後トヨタ社が昨年夏のマイナーチェンジでノア系三車種についてのみステップ形状・寸法の改良を行って大分良くなり、構造と機能で他社品よりも一歩先んじましたが更なる改良を期待したいところです。

(同等他社品に先んじて 短過ぎたステップの長さはひとまず解決しましたが…)
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サイドリフトアップシート仕様にはもう一つ注意しなければならない事があります。 それは作動時にシートが車体の外まで出てきてくれるので、言い方を変えれば「車体の左側に乗降の為の余分なスペースを必要とする」ということです。
具体的にはサイドリフトアップシートを一番外まで出した状態でそのステップの先端部が車体横96〜100cmくらいの位置までせり出してきます。 前述の通りステップから足の先がはみ出しますし更に人が立ち上がる為のスペースも必要になりますので、どの車種も車体の横に160cmくらいはスペースが欲しいところですね。

(私の80系ノア前期型には96cmほど外まで出て来てくれる従来型のサイドリフトアップシートが搭載されていました。 高さについては最後に上下してくれて好きな所で止めることができますので、位置が低過ぎるとか高過ぎるといった心配はいりません)
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ちなみにこの車体側方の乗降スペースについてはトヨタ社では要改善課題だと感じていたらしく、ノア系三車種については昨年夏のマイナーチェンジでサイドリフトアップシートそのものについても仕様変更が加えられて、後期型ではせり出し量が55cmに抑えられたサイドリフトアップチルトシートに変更され、従来よりも乗降時に立ち上がり易いよう絶妙な角度になってくれるようになりました。

(この角度は確かに立ち上がり易いです。 それについては確かなのですが新たな課題が…)
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これはトヨタ社によれば杖をついている高齢者を意識しての仕様変更だったらしいのですが、私のように寝たきりの要介護者を乗せるケースがあるユーザーにとっては「従来型みたいにシートが外までちゃんと出て来てくれなくなったので、要介護者を抱えて座席に乗降させるのがかえって難しくなってしまった」という新たな悩みを抱えてしまうことになりました。

(画像を借りてきました。 医療機関や介護業界では基本的にこのようにして二人で対象者を抱えますので、従来型みたいに座席が外まで出て来てくれないと乗降が困難になってしまいサイドリフトアップシート系の存在意義が大きく損なわれてしまいます)
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また、全ての自動車に言えることなのですが 座席に人が座った状態でシートをリクライムさせると、背中が座面と背もたれとの間に挟まれる形で『背ずれ』が起きてしまいます。 これに対して歯医者さんの治療台の座席など医療用のシートにはそうした『背ずれ』が発生しないように人体工学に即したリクライム機構が備えられています。
いやしくも福祉車両を名乗るからには、通常の座席はともかくサイドリフトアップシート系だけでもこの医療用のシートみたいに『背ずれ』が発生しないリクライム機構を導入するべきだと思うのです。

この件については春のバリアフリー展でトヨタ社のブースへ赴き、メーカーへ早急に検討・対処して貰えるよう直接(来場されるのであれば福祉車両の開発責任者である中川主査へ直々に)訴える予定です。

(後期型に搭載されているサイドリフトアップチルトシートです。 これでは座席が奥まったままなので要支援者や軽度の要介護者には問題がなくても、重度の要介護者や起き上がれないほど体調を崩している病人や高齢者を乗降させたい時に従来型のような「座席が車外まで出て来てくれる」という利便性が失われてしまい、病院や施設のスタッフが二人がかりで抱きかかえて乗降させることができなくなってしまいました。 同様の指摘は既にトヨタハートフルプラザさんには多数寄せられているそうです…)
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今回は 福祉車両を検討されている方々に少しでも参考になればと思いましたので、カタログだけでは分からないであろうことや私自身も一年間使ってみて初めて見えてきたことも交えて、各メーカーのサイドリフトアップシート仕様について自分自身が知り得る限りのことを書き出してみました。

私自身の車種選びの時期はマイナーチェンジ前の頃でしたので、前期型の二列目サイドリフトアップシート仕様をベースとして、そこに補助的なオプションパーツを追加していく事で「乗せる対象となる人を助けて守ってくれる車両に仕上げる」という方向性で進めたのですが、このオプションパーツについても気づいたことがありますので次回はそのあたりについて述べてみたいと思います。
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