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ブレーキが付いていなかった自転車

「重大事故に繋がる危険性があるとして公道走行が禁止されている『ブレーキの無い競技用自転車(ピストバイク)』について、東京都が2月の定例議会に、全国で初めて一般販売を禁止する条例案を提出する」というニュースが報じられていました。

ブレーキを付けていない自転車による公道走行が話題になる度に、ある青年の事を思い出します。

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今から何年も前の事ですが、当時の盛豚の職場の近所には、いわゆるメッセンジャーと称する自転車乗り達の溜まり場がありました。 それは大阪市中央区のド真ん中にあるホテルの前で、ホテルの角に内設されている交番の反対側の角(その距離約15mの場所)にあり、メッセンジャーが木陰を求めて休憩場所みたいに使っていたのでした。
その影響なのか、周囲の駐輪自転車にもブレーキが付いていない自転車を見かける事があり、冒頭の画像の自転車に近付いて良く見てみると…

(固定ギアにしてるのでしょうか…)
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明らかにブレーキ取り付け台座があるのにブレーキが付いていません。 この自転車はいつも飲食店の前に置きっ放しだったので、オブジェとして置いてあるのだと思いたいですね。

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またある所には…

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とまぁブレーキが付いていない自転車がチラホラ止まっていて、下手をすると前後車輪ともブレーキが付いていない自転車や、こんな自転車を見かけた事さえありました。

(何か違和感が…)
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(ハンドル周りを良く見ると…)
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(ハンドルバーの代わりに塩ビパイプを使ってやがる…。 しかも折れた痕が…。)
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今さら言うまでもない事ですが、日本の道路交通法では公道を走行する自転車について、前後車輪の両方にブレーキを付ける事を義務付けています。 どちらか一方だけでは適合しませんし、ブレーキが付いていない自転車など論外です。

以前、ある芸能人が自転車のブレーキを外して公道を乗り回していたとして、赤キップを切られたというニュースが報じられていた事からも分かる様に、自転車の世界には他の乗り物の世界から見ると考えられないほど異常な行為が存在します。 何と、自分の自転車からブレーキを外して、公道を乗り回している輩が存在するのです。(自動車やオートバイでは何十万円も払って強化する事はあっても外す事はあり得ません。)
それは違法行為であり、非道徳的行為でもあります。

 

話を戻して溜まり場にいたメッセンジャーの事なのですが、実はその中の一人の青年と話をした事があります。 アタッシュケースを片手にスーツを着たサラリ-マンがメッセンジャーバイクをじっくり観察している姿が珍しかったのでしょうか。 彼の方から話しかけて来ました。

  
青年 : 「自転車好きなんスか?」

盛豚 : 「ちょっとね。 僕も自転車に乗ってるから…。 グラン・コンペのフロントブレーキやシュパーブ・プロのラージフランジが付いてるところを見ると、君はかなりの自転車好きなんだね?」

青年 : 「ハイ、でもあなたも詳しいですね」

盛豚 : 「ありがとう、ちょっと好きだからね。 ところでこの自転車、リアブレーキが付いてないけど…?」

青年 : 「一応フロントは申し訳程度付けてるけど使いませんよ。 ピストはペダルのバックを踏むのがブレーキなんで。 バックを踏むの意味、分かりますよね?」

盛豚 : 「分かるよ。 ちょっと減速するだけで止まれないって事もね」

青年 : 「それをコントロールしてこそ本物のピスト乗りですから」

盛豚 : 「でも急ブレーキはかけられないし、そんな弱い減速力でも止まれる範囲で走ろうと思ったらママチャリよりもゆっくり走らなきゃならなくて、メッセンジャーとしての仕事効率も良くないんじゃない?」

青年 : 「そんな事言ってたらメッセンジャーなんて出来ませんよ」

盛豚 : 「今までに事故や危ない目に逢った事は無いの?」

青年 : 「コケた事はあるけど、ちゃんと周りを避けて歩行者にはぶつけませんでしたよ」

盛豚 : 「そうか、歩行者や周りにぶつけないように避けたっていう処は感心だね。 ところで君には彼女とか兄弟とかいるのかな?」

青年 : 「彼女も兄弟もいませんけど、幼い姪っ子がいます」

盛豚 : 「可愛い?」

青年 : 「ハイ! 正月もお年玉やるために今は仕事増やしてもらってます」

盛豚 : 「気を悪くしないで欲しいんだけど、君が何をしているのか自分自身でまだ気付いていない様だから、今から話す事を聞いてくれないかな?」

青年 : 「はい…」

盛豚 : 「君達ノーブレーキピスト乗りが自転車でやっている事を自動車に例えると、ドリフト仕様の改造車を街中で乗り回している様なモノかな。 ブレーキランプが灯くのはカッコ悪いからエンジンブレーキしかかけない。 交差点は全てフルカウンターのドリフトで曲がるし、フットブレーキは絶対に使わない。 もちろん車は急に止まれない。 子供が飛び出して来たら人身事故になるだろう。 そこでだ、もし君の可愛い姪っ子がそんな車に轢かれたら君はどう思う? 『ブレーキぐらいかけられるだろ!』って君が問い詰めた時にその加害者が『ドリフトは気合と迫力が勝負だから、ブレーキなんてみっともなくってかけないのが当たり前なんですよ。 だからブレーキは外してるんで轢いちゃいました。 そもそも飛び出して来る方が悪いんじゃないですか!』なんて言ったら、君はそいつを許せるか? そして姪っ子が一生車椅子生活になってしまったり死んでしまったりしたら、君はどう思う? 見たところ君はヘルメットもかぶっているしグローブも着けている。 自分自身の安全への配慮だけでなく、自分がコケる時でも人にはぶつけないという立派な信念も持っている。 僕もブレーキの付いたピストに少しだけ乗らせてもらった経験があるから、ペダルのバックを踏んでスピードコントロールするのが難しいという事は知っているつもりだ。 その難しさに挑戦する事は、ある意味向上心でもあると思う。 でも万一の時の安全の為に、ブレーキというものがあるんじゃないかな? 君は今一つの成長の階段の目の前にいる。 ピスト乗りとしても、そして人としても…。 後輪にもブレーキを付けるかどうか。 バックを踏んで走らせるけれど緊急時にはブレーキに指をかけて引くかどうか。 そうする事も、立派な勇気なんじゃないかな? 少なくとも僕の目から見た君は、その勇気を持てる人間に見える。 今ならまだ間に合うよ。 僕はそう思う」

青年 : 「…」

盛豚 : 「…。 長話して済まなかった。 仕事があるから失礼していいかな?」

青年 : 「…」

 

  
次に彼の姿を見かけたのは二週間後でした。 そして、彼の傍にある水色のピストには、グラン・コンペのブレーキが前後に付けられていました…。

 

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コメント

啓蒙活動、お疲れさまでした。
自転車乗りとして、自分が被害者にも加害者にも
なり得ることを自覚することが大事ですよね。
その後、この話は青年から他のピスト仲間にも伝わった
ことを期待したいですね。^^

>ocean810さん
.
そうですね。 交通において被害者になるのも悲惨ですが加害者になるのも悲惨ですからね…。 その被害者・加害者になる確立を飛躍的に高めてしまうブレーキ外しは、正気の沙汰ではありませんよね。
彼を中心にブレーキを付け直す自転車が一台でも増えてくれる事を願って止みません…。

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