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時代を変えた者達

今朝は目が覚めると日本待望のソチ・オリンピック金メダルの吉報に沸いていた。

羽生結弦選手、男子フィギュアスケート個人戦での優勝、おめでとうございます。

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東日本大震災を受けて、羽生選手が選手活動継続の可否について非常に悩んでられたのは、今なお記憶に新しい。 そしてその時に出された「自分が活躍して東北を勇気付ける」という決心と、その少年離れした高い志が実を結ぶまで全うされた事を、心より称賛申し上げます。

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私自身は特にスポーツマンでも何でもないが、両親がNHKのフィギュアスケート放送をよく観ていたので、幼い頃からコタツの中でこの競技を観てきた。
個人的に好きで最も印象に残っている選手はフィリップ・キャンデロロ選手だ。

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今回のソチ・オリンピックでは「日本初の金メダル」という明るいニュースの影で、二人の偉大な選手がリンクを後にしようとしている。 この二人は自分自身の地位や名誉よりも、フィギュアスケートの未来と発展をかけて戦い、時代を変えた男達だ。

一人は今回の個人戦で棄権・引退を表明したロシア代表のエフゲニー・プルシェンコ選手だ。 直前の練習中にジャンプでバランスを崩し着氷した瞬間に「アッ…!!」という感じがしたのだが、やはりそのまま演技を断念・棄権となった。

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ごく一部で「自分が代表になりながら棄権して、若手から奪ったチャンスを無駄にした」という心無い批判もあるそうだが、プルシェンコ選手の成績については今更言うに及ばないし、その功績や選手としての姿勢を鑑みる限り私はそうは思わない。

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国に割り振られた出場枠を与えられ、国費で強化練習費や渡航費・制服・他を与えられている以上、代表選手はある程度は公人としての責務を持つ。 それが嫌なら辞退すべきである。 バンクーバーの時にそういう事を理解できておらず素行が悪かった日本人選手が、世論で叩かれていた。 それについては異議を唱えるつもりは無い。

だが、順位やメダルに拘る権利は選手の物であって世論の物では無い。 代表選手の成績・結果が期待外れだと批判している人がごく一部でいると報じられているが、それは負け犬の遠吠えみたいなものであり、八百長や無気力試合でも無い限り代表選手の成績・結果を批判する権利などこの世には存在しないと考えている。
代表選手の成績・結果に不満があるならば、自分が代表選の大会に出場するべきなのだ。

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前大会バンクーバーオリンピックの頃は、フィギュアスケートの採点方式は大雑把に言うと減算方式で小さなミスや失敗の揚げ足を取り、難度の高い技を成功させても評価され難い方式だった。 だがリスクの高い四回転ジャンプに挑む選手が減る中で、珍しく積極的に大きな規模の記者会見を開いたプルシェンコ選手は、「男なら最高難度の技で勝負すべきだ。 誰が何と言おうと私は四回転ジャンプを跳ぶ。 四回転ジャンプ(この場合は「高度な技への挑戦」を意味する)はフィギュアスケートの未来なのだ!」と力説していた。
呼応するかの様にフランス代表のブライアン・ジュベール選手も四回転ジャンプを敢行するも失敗。 高橋大輔選手もその言葉で決心がついたのか、決して成功率が高くないにも拘らず四回転ジャンプを敢行して、失敗こそしたものの銅メダルを手に入れた。 その顔は「出しきった」充実感に満ちていた。

結果は四回転ジャンプを避けた選手が金メダルを獲得したが退屈感が否めず、表彰式でもプルシェンコ選手のブラックユーモアに満ちたジェスチャーが世界中に放映され、その後もメディアを通してプルシェンコ選手は採点方式の改正を訴え続けた。
そしてこれを切っ掛けに国際スケート連盟の採点方式は、難度の高い技に対する評価・加算方式が加えられる形で改正された。

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挑戦と進歩に逆行する採点方式に異を唱え、フィギュアスケートの未来を切り開き、今では腰に3本のボルトと人口椎間板が入っていて、摩滅したヒザの半月板は既に除去されて久しく、長年の酷使が祟って全身がボロボロで、人間用の痛み止めが効かないので馬用の痛み止めを使用し、それでも団体戦では金メダルを獲得して、個人戦の演技直前の練習中にジャンプの着氷に失敗して激痛に耐え切れず、コールを受けて演技開始まで残り1分を切ったところで断念したプルシェンコ選手の無念の表情を見た時に、会場を埋め尽くしていたファンは惜しみない拍手を送った。

及ばずながら私も心より称賛申し上げたい。 その場にいた全ての人達に…。

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減算方式の採点方式と戦いフィギュアスケートの未来を切り開いて、時を同じくしてリンクを去る意思を表明した選手がもう一人いる。 フランス代表のブライアン・ジュベール選手だ。

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ジュベール選手は生後11ヶ月で感染症により片方の腎臓を失った(その関係でウィリアムズ症候群患者のサポート・チャリティ活動に熱心だと云われている)という不利な肉体にも拘らず大成し、トゥーループとサルコウの両方で四回転ジャンプを跳ぶ選手で(詳細はNHKスペシャル「ミラクルボディー」を参照)、「四回転マシーン」とか「スーパー四回転サイボーグ」等の異名を持ち、2007年の世界選手権を制覇している。
自身も認める通り調子の浮き沈みが激しく、オリンピックではついにメダルを獲得できなかったものの、公式戦で通算100回以上の四回転ジャンプを成功させるなど、世界的一流選手である事は間違い無い。

採点方式が減算方式だった時代でも「真のスケーターならショートプログラムでも四回転ジャンプを跳ばなければならない(勝負するからには逃げるな、最高の技に挑戦しろ! という意味)」と発言し、四回転ジャンプを回避する選手が増える中でプルシェンコ選手と共にリスクを恐れず挑み続けた選手だ。

荒川静香選手によれば「四回転ジャンプを守った功労者」との事で、ライバルのプルシェンコ選手と共に無難な道に逃げる事を好しとせず、難度の高い四回転ジャンプを跳び続けた。

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時は流れ二人の選手は肉体的なピークを過ぎ、果敢に四回転ジャンプを跳ぶ羽生結弦選手を始め次世代選手達へ時代のバトンを渡したかの様に、ソチ・オリンピックの個人戦当日付けでの引退を表明した。

時代を変えフィギュアスケートの未来を切り開いたお二人の事を、ファンはいつまでも忘れる事は無いだろう。

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つぶやき」カテゴリの記事

コメント

懐かしい!
私もキャンデロロの大ファンでした。
彼の表現は大勢とは一線を画す魅力的なものでワクワクさせらたものです。

>えむきゅうさん
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懐かしいですよね、キャンデロロ。 特に『ダルタニアン』が好きでした。
バレエ的要素が主流な中で芝居的要素が濃い独特の表現力は、観客を魅了して記憶に残る選手でしたねぇ。
またああいう選手が出て来てくれたらなぁと思わずにいられませんよ…。

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