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近田さんへ (『今宮さんへ』記事に頂いたコメントへの返事)

過去記事に頂いたご質問にお答えする為に 画像を使って解説する必要がある為、今回は臨時の記事を書かせて頂きます。

 

個別のやり取りの為にブログ記事本文を使う事になり 他の読者様には申し訳ありませんが、これまでに当サイトで掲載した記事に関連する回収事項ですので、何卒ご容赦下さい。

 

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>近田さん

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長い文章になりますので先に簡単な自己紹介をしておきますね。

私は公式レースに出場した実績はありませんのでそうした記録で探しても出てこない存在です。 メディアからの取材申し込みも断ってきたので、あの界隈でもそちらのkobayashikunのようなごく一部の昔の人だけが思い出せるかどうかという程度でしょう。
活動は休眠状態になって十年を優に超えますが、現役時代はせいぜいセントラルの走行枠で走る程度で公式戦には出走しておらず、地元やナベタ遠征の時に決勝を走った事があるという程度だと言えば何となくお分かり頂けるかと思います。

またノウハウの構築についてはメーカーの基本的な組み立てノウハウをベースとして、ペリを組むにあたってはヤシロさんに・セットアップにあたってはヤシロさんとジャックポットさんとアルファさん(←チューニング業界の方ではなくレース業界の方です)に助言を頂きながら、これらを基軸として 部分的にカメアリさんや渡部氏などが公開されていたL型系ノウハウも参考にしつつ、自分で試行錯誤を重ねて経験を積みました。
本文の内容がこれらの皆様のノウハウやご意見と一致するという保証はどこにもありませんが、私がどこ系のノウハウの流れを汲み 大体どの程度なのか想像がついたと思いますので(要するに北関東の老舗ロータリーショップや南関東のロータリーショップとは異なるノウハウの流れを汲んでいます…)、そろそろ本題に入りたいと思います。

なお 以下に記す事はあくまで私自身の私見に過ぎず 何かを保証できるものではありませんので、予めその旨をご了承下さい(この世界は自己責任が常ですので…)。
そしてこの内容は一読しただけでは理解できないと思いますので、何度も繰り返し そしてゆっくりと読んでみることをお勧めします。 実際 私は何度も面談で助言を頂いた方々の話を直後に全てノートへ記して以後何年も読み返し、トライ&エラーを繰り返す過程でも何度もまた引っ張り出してきては読み返して実体験と照らし合わせて分析する日々を送り、そうやって学び積み重ねてきました。

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【IDAのフロート増量について①】

 

まず お問合せの「フロート増量」の意味は「IDAのフロート室内で燃料に浸りながら浮かんでいる真鍮製の純正フロートそのものを弄ることを意味するではなく、フロート室の容量をノーマルの容積から加工によって増量させる行為のことを意味する」と認識して話を進めていきます。

 

結論から言いますと 「私自身の経験の範囲内では、ドラッグレース系の用途で13Bペリを全開走行するにあたって、フロート室の増量が必須だと断定できるところまでは到達していない」と現時点では考えています。 しかしながらその考え(←最終結論ではない)に至るよりも以前から、私のIDAにはフロート室の増量加工を施工してありました。
ただし私が施工したのは「IDAのフロート室を打ち抜いて外側にアルミ製の箱を溶接する方法で拡張する」という手法ではなく、「IDA内部の空きスペースを活用する方法で拡張する」という手法を取っていますので、外観からフロート室の増量加工を施工してあると見て取れる特徴はありません。

このままフロート室の増量加工の具体論に入ってもいいのですが、その前になぜ私自身がフロート室の増量加工を施工しておきながら他人に対しては「フロート室の増量が必須だと断定できるところまでは到達していない」などと回りくどくて〇とも×ともハッキリしないまま消極的な考えを示すのか、その理由について順を追って述べてみたいと思います。

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【私がフロート室の増量をした理由】

 

確かに先人の中にはドラッグレース系13Bペリのユーザーの一部に、なぜかIDAのフロート室を外側へと拡張する増量加工をする人達がいました。 これは比較的少数派だったと記憶しているのですが、そもそもなぜそのような事をしなければならなかったのでしょうか?

 

前期型すなわちNAのSAをベース車両にしていた私がフロート室の増量に踏み切った時の動機は、「13Bに換装したら全開走行時に 3速の途中でフロート室内の燃料が底をついてしまい、失速するようになった」という症状に悩まされていたからです。

私の車ではIDAの燃料消費量に対して燃料タンクからの供給側はミツバのキャブ用ポンプに交換して対処していましたが、それだけでした。
「強化品であるミツバのポンプでも燃料供給量が消費量に追いつかないのなら、フロート室の容量を大きくしておけばいいだろう」という安易な考えでフロート室の増量に踏み切った訳ですが、今にして思えば目先のことしか考えていない軽率な対処でした(もう少し知識があればFJポンプとレギュレーターを取り付けることで対処していたのですが…💧)。

精一杯背伸びして言い訳をするならば、後で述べる「油面の乱高下や変化をなるべく抑えて安定させたい」という考えにも通じる動機だったと言えなくもないのですが、この当時はまだ油面の重要性を理解できておらず単純に燃料切れ対策としか考えていなかったというのが実情です。

 

結果論で言うとこの時点での私が取るべき対処は「フロート室の増量」ではなく「燃料供給ラインの強化・再構築」だったのですが、当時の私は勉強不足のせいで問題の根幹を見抜くことができていなかったのです…。

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【「フロート室の増量」の前に「燃料供給ライン」の強化・再構築を】

 

ここからは「インジェクション車 → キャブ仕様」の公認取得が容易だった 私の現役時代の感覚で述べますね(最新の事情には疎いので…)。

 

SAで13Bペリをやるにあたっては、実はベース車両がターボか否かが一つの分かれ道となります。 これは「L型で頂点を目指すのなら 最初のベース車両がS30Zであるか否かが大きな分かれ道となる」と言われてきたのと似たようなモノです。
私の場合は前期型すなわちNAのSAがベース車両でしたが、前述の先人たちもそのほとんどが前期型のSAがベース車両でした。

SAの前期型に対して後期型のターボでは 車体の各所に改良が加えられているので、結構モノが違います。 フレームが補強されていて車体剛性が高くハンドリングも大幅に向上しているのは勿論ですが(おそらくトラクションの掛かりの良さも違う筈です)、実は今回の記事のテーマに大きく影響する燃料の供給系にも違いがあります。
特に注目したいのはガソリンタンクから燃料を送り出してくる燃料ポンプなのですが…

[その①]
SAの前期型にはキャブレター用の燃料ポンプ(燃圧が低い・吐出量が少ない)が取り付けられている為、IDAを取り付けて乗っているとすぐにフロート室内の燃料が底をついて失速してしまいます。 そこで強化品とされるミツバのポンプに取り換えていたわけですが、アクセルのオンオフを繰り返す峠ならいざしらず ドラッグレース系の全開しっ放しな乗り方では3速の途中で同じ症状が出てしまい、前章で述べたようなフロート室の増量へと踏み切ったのですが、賢い人はこの段階で「FJポンプ&レギュレーターを導入」という適切なルートに進んでいったと思います(私の場合はその後13Bサイドの時に エンジンルームの隅の方へコレクタータンクやFJポンプを設置するなど、リスクを抱えた燃料供給ラインになっていきました…💧)。

[その②]
これに対して後期型のターボではインジェクションターボ用の高圧ポンプ(燃圧が高い・吐出量が多い)が取り付けられているので、こちらの車両をベースにしてペリとIDAを搭載すると、キャブレターとの間にレギュレーターを取り付けて減圧してやらなければならないほど強力な燃料供給力が始めから備わっています(レギュレーターを取り付けなかったらキャブから燃料が溢れて火災になるおそれがあります…🔥)。

 

もうお分かりだと思いますが、ベース車両の違いによって[その①]に振り分けられた挙句に対処方法の順序を間違えてしまった為にフロート室の増量にまで迷い込んでしまったのが私であり、適切なベース車両に導かれて[その②]へと進み「フロート室の増量って何? それって食べたら美味しいの?」と ちっとも困っていないのが現在の近田さんというわけです(笑)
実際、SAが現役だった時代から「ベース車をブラックテールのターボにすると燃料計はレギュレーターを付けるだけでOK。 そのままペリまでいける」と云われていました。

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【私がフロート室の増量に積極的ではない理由と、否定まではしない理由】

 

前置きは済んだのでそろそろ話の核心に入りましょう。

 

[その③]
今の私がフロート室の増量に積極的ではない理由は、ここまでの流れで述べているように「どのみち必須となる燃料供給ラインの強化・再構築(燃圧を上げずに吐出量の多さを確保すること)を先に施工すれば、フロート室の増量をしたくなるような不具合に直面すること自体が そもそも発生しないのではないか?」と考えているからです。
また、「フロート室の増量にはデメリットもある」という 経験論を持っていることも挙げられます(具体的な内容は後述します)。

[その④]
その一方で私はフロート室の増量について「必須だと断定できるところまでは到達していない」という表現にとどめており、否定はしていないのも確かです。 その理由は「フロート室の増量には恩恵が無いとこの目で確認できていないから」です(具体的な内容は後述します)。

 

私が13Bサイドの頃にフロート室を増量した時は「全開走行時に3速の途中でフロート室内の燃料が底をついてしまう」という点にのみ注目していましたが、実は13Bペリを搭載して一定のレベルを超えて「ライバルとの闘い」や「タイムとの闘い」という極限を目指す道に進むと、その先にはまた新たな領域が待っていました。
そこでは今まで「これは自分と愛車の大きな力であり武器だ!」と思っていたものが「そんなのあって当たり前」となってしまい、「そこまでやっても具体的な差は実感できないから必要ないだろう」と思っていたことが「どうしてもそれに取り組む必要がある!」に変わっていきます。

加速やパワーや勝敗に固執するようになり、闇雲にアクセルを踏み込むのではなくスタート練習に取り組む走り込みをするようになると、感覚が鋭くなって従来の自分では気づかなかったモノに気づき 感じ取れなかったことを感じ取れるようになる…
そんな領域に入った頃からキャブレターの油面が気になってきました。

実はペリにする前のエンジンでも油面は調整するようになっていて「ここがベストだ!」という位置は見出せていました。
油面というものは高ければいいというものではなく、かといって低くなっていては本来のキャブの性能は出せません。 自分がベストだと感じてセットしていた油面の高さはノーマルよりも少し高めな程度でしたが、フロート室を増量した時からその影響で「カーブやUターンである程度以上の横Gがかかると軽いオーバーフローを起こして霧化していない液体のままの燃料がインマニに流れ込んでしまい、エンジンがストールしそうになる」というデメリットが顕著になってきました。
そこで油面を少し下げてみたりあれこれ試した挙句、結局は先に述べた「ここがベストだ!」の高さに戻ってきたのですが(加速性能は妥協できなかったので…)、仕様がペリになった時にキャブも51Φへと更新したので フロート室の増量の仕方というか加工箇所の形状を従来の48Φの時とは少し違う形状にしてみたところ、多少は改善されました。

この「ある程度以上の横Gを受けると発生するオーバーフローが、それまでよりも敏感に発生しやすくなる」という現象が、[その③]で述べたフロート室の増量によって経験したデメリットでした。

 

一方でキャブレターの性能を引き出す上で最も重要なのは油面の高さを闇雲に上げることではなく「適切な油面でその高さを絶対的に安定させることである」ということはご存知だと思いますが、これも関係してきます(おそらく前述の先人たちの一部がフロート室を外側に拡張してまで増量していた理由は、ここから先の話に関係してくると思われます)。

ミクニソレックスに比べてウェーバーはフロート室の容量が小さいので、昔は「ゼロヨンにはミクニソレックス、峠にはウェーバー」という格言があったほどでした(フロート室の容量が大きいミクニソレックスは燃料消費による油面の乱高下が少なくて安定しているのが重宝される一方で、峠ではカーブの横Gで油面が乱れてオーバーフローを起こして時々エンジンが咳き込むようなシャクリが発生する傾向があるという弱点があると云われてました)。
ドラッグレース系の全開走行ではアクセルパーシャルの状態がほとんどなくひたすらフルスロットルなので、フロート室内の燃料は一気に消費されていきます。 もちろん燃料が消費されると油面と一緒にフロート位置が下がるのでニードルバルブから新たなガソリンが供給されてフロート位置と油面が元の高さに向けて回復していくわけですが、この過程でフロート室内の油面が上下に変動していることが分かります。

この油面の上下動はなるべく小さくてかつ穏やかであるに越したことはありません。 なぜなら油面の高さが変わるとエマルジョンチューブで作り出されるミクスチャー(燃料と空気が混合して泡状になった物)の混合比率が本来そのセッティングで作り出される筈だったものとは乖離してきてしまうからです(特に高速の補正用エアーホールが沢山あるタイプのF8やF11などのエマルジョンチューブを使っているのであれば、より大きな影響が出るものと思われます)。 ミクスチャーの混合比率が本来のセッティングとは乖離してしまうと、当然 インナーベンチュリーのメインノズルから供給されるミクスチャーがアウターベンチュリーで霧化した時の空燃比も本来のセッティングとは乖離した吸気となってしまうことになり、すなわち燃調が乱れるのでエンジンのパフォーマンスにも悪影響が出ることになります(ドライバーが運転しながらそれをどれだけ感じ取れるかは分かりませんが…)し、何よりエンジンブローのおそれも出てきます(これだけは避けたい!)。

 

これらを意識すると…

「エンジンパフォーマンスを安定させてエンジンブローを防ぐ為にも油面を安定させたい」
  ↓
「油面を安定させるにはフロート室の容量が大きい方が好ましい(理論上は大きければ大きいほど良いということになります)」
  ↓
「フロート室の容量を増量したい(現実的な範囲に限られますけど…)」

という考えが浮かんでくるのも想像に難くありません。
ですがそもそも燃料消費量に供給が追いつかないせいで発生する油面の上下動を 極力減らして安定させたいからこんなことに陥っているだけなので、理論上は「フロート室内での燃料消費量と供給量のバランスが完璧な状態かつ迅速で、油面が全くと言っていいほどブレないセットアップを実現できているのであれば、それ以上フロート室を増量する必要性がないことを意味する」ということも頭に入れておかなければならないでしょう。

IDAのフロート室を増量加工していた件の先人たちの一部は、もしかしたらこうした油面の変化に空燃比が影響を受けて 出力特性に悪影響が出るのを感じ取っていたのかもしれませんね。

 

なお、[その④]で「フロート室の増量には恩恵が無いとこの目で確認できていないから」と述べた理由は、全開走行時にこうしたフロートの中で油面がどう変化しているのかを カメラなどを用いてこの目で映像として見て確認することができていない為です。 もしその映像を見ることができてそれがアッと驚くものであったとしたら、あるいは私もフロートを外側へ拡張してでも大幅に増量していたかもしれません…。 

フロート室内での油面の動きを見ることができない代わりに 類似する情報として車内に燃圧計を取り付けることも検討しましたが(実際にL型系の猛者の中には取り付けている人がよくいました)、車内に燃圧計を取り付けるということは車内に燃料供給ラインの一部を引き込むことを意味しますので、私は車内火災のリスクを避ける意味でこれを採用せず、燃圧計は小型の物をエンジンルーム内のレギュレーターの隣に設置するに留めています(ボンネットに穴を開けて大径の燃圧計を取り付けるというアイデアを検討したこともありましたが、これもボツになりました…w)。

全開走行中に燃圧の変化を是非とも確認したかったのですが、昔からドラッグレース系の界隈では時々それが原因で車内火災が発生していますので…(今でもちょっとググれば動画が出てきます)。

 

このように私の場合は車内火災のリスクを避ける為にここで線引きしてしまい、全開走行中(特に3速トップエンド域)の厳密な燃圧管理を諦めてしまったわけです。 でもL型の猛者の皆さんのようにリスクを覚悟してでも私よりも先へと進んで 全開走行中の厳密な燃圧管理を行った人たちは、私がまだ見ていない領域で「3速トップエンド域での燃圧のブレと供給量の落ち込み」を見たり、その結果としての「FTピストンでセカンドランドの棚落ち」などを経験されたのではないかと推測しています。

そうでなければカメアリ系のノウハウの流れを汲む人たちの中に「燃圧を抑えつつ大量の吐出量を稼ぐ為とはいえ、燃料タンクとエンジンルームを繋ぐ配管を供給側とリターン側の両方で1本ずつ以上も増設してまでFJポンプ×1基とミツバの電磁ポンプ×3基による供給を並走させる(若しくは類似する他のシステムを構築する)」などという大掛かりな燃料供給ラインの強化・再構築をする必要に迫られた人たちがよくいたという事実に説明がつきません。

ところが私の13Bペリはレブリミット1万回転(ここ一番では ↑ )で乗ってましたけど一度もメタルが流れたりブローしたことがありませんし、パワー特性的にもトップエンドまでトルクの落ち込みが少ないパフォーマンスを確保できているので(ヤシロさん、ありがとうございました。 あなたが提供して下さったポートタイミングに関するデーターを参考にさせて頂いたお陰です🙇)、これ以上の燃料供給ラインの強化や更なるフロートの増量が必要だという実感が湧かないままなんですよね…。

 

IDAのフロート室に穴を開けて外側に拡張してまで増量加工をしていたのは南関東のトッププライベートというグループのノウハウの流れを汲む人たちの間でよく見られた手法なので、その中心人物(モッチレーシングさんの方ですね)にコンタクトすると もしかしたらその理由などが聞けるかもしれませんね。

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【総括】

 

先にも述べたように一般的にはフロート室の容量が多いほど油面が安定すると考えられている一方で、理論上は「燃料供給量と油面の安定が適切な状態でさえあれば、それ以上のフロート容量は必要ない」ということになるので(←要するに タービンのサイズとは違って キャブのフロート室の容量をデカくすればするほどパワーが上がるということではない)、不具合を感じていないのならフロート室の増量に着手する理由はないと 私は考えています(私は「チューンはファッションではないので、必要性に迫られておらず機能や性能に寄与すると確認できてないことをするのは、無駄にトラブルの原因を作るだけなのでやらない」というレース業界と同じ方向性の信念を持っていますので…)。
もし全開走行でのパフォーマンスでキャブに起因する不具合を感じるようなことがあったとしたら、フロート室の容量を気にするよりも前に燃料供給ラインを見直したり増強したりして(←ベース車がターボなら余程の域に達していない限りこれは必要ないと思うんですけど…)、それでも満足できないor「どうしても試してみたい」というのであれば 次の章で述べる「IDA内部の範囲でフロート室の増量」を検討するといいでしょう。 それでも3速トップエンド域で燃圧がブレたり燃料が不足したりするというのであれば、そこで初めて「フロート室を外側へ拡張する(←私なら自分が今現役であったとしてもやりませんが…)」という手法を検討すればいいんじゃないかなというのが、私の率直な意見です。

実際、渡部氏ほか 燃料供給ラインの構築にもの凄くノウハウを持ってらっしゃる元学園系のL型の猛者の方々の中にも ウェーバーを使っていた人はいましたが、フロート室を外側に拡張してまで増量加工を施工してパフォーマンスを上げたという話は聞いたことがありませんし、彼等が公開していたエンジンルームの画像からもそのような痕跡を見て取れたことはありませんでした。
また13Bペリの頂点を極めた旧トップフューエルレーシングさんの石田氏(故人)もまた IDAのフロート室を外側に拡張してまで増量していたという話は聞いたことがないので、そういうことなんだろうなと思っています。

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【IDAのフロート増量について②】

 

私が使っていた48ΦIDAのフロート増量加工について参考画像を添付します。
IDAのフロート室の隣には「コストダウンの為に肉抜きした結果としてできた空き部屋」がありますので、その空き部屋とフロートを分断している隔壁を削り取って繋げてやることによって、空き部屋をフロートの一部として活用しようという発想です。

(フロート室の横にあるこの空き部屋を活用します)
Ida 

これによって増量できる容積はせいぜい40cc前後ではないかと思われますが、13Bサイドの燃料供給ラインがミツバのポンプに交換しただけというショボさだった当時でもゴールまでフロート室内の燃料切れを起こさなくなりました(まぁ、前述のようにこれは本来先に行うべきであった「燃料供給ラインの強化・再構築」をしていれば必要のなかった効果なんでしょうけど…😅)。

(13Bサイドで使用していた48ΦIDAです。 フロート室と空き部屋の間にあった隔壁を切削加工で除去しています)
Idadscn3351 

Dscn3348 

Dscn3344 

51ΦIDAではフロート室と空き部屋を区切る隔壁を全て取り除くのではなく、空き部屋とフロート室を繋げるけれど隔壁はバッフルプレートとしてなるべく残しておくという発想で、15Φ程度の穴を盾に2個ほど開けてやる(上側の穴は油面の上にも顔を出す位の高さです)だけに留めた加工をしてみたところ、前述の通りカーブである程度以上の横Gがかかった時に発生するオーバーフローが多少改善されました。

※ …(51ΦIDAは加工済み品を中古で手に入れた物ですが、それなりに使い込まれていたにも拘らず 中を開けてみるとフロート室の容量加工はされていませんでした。 つまり前オーナーさんは「フロート室の増量の必要性に気づいていなかった」or「フロート室の増量の必要性を感じていなかった」ということなのでしょう)

(51Φは現在手元に現品がないのですが、この赤い丸印の部分だけ15Φの穴が開いていると思って下さい)
Idadscn3345  

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【最後に】

 

先にも述べたように この世界では自己責任が常ですし、同じ事象についても人によって考えや認識が異なることは珍しくありません。 たとえ同じ経験をしても感じ方が違って異なる感想を持つことさえあったりするのが人の世というものです。

私も含めて他人の言葉を鵜呑みに信じるのは禁物ですので、情報を集めたり他人に頭を下げて教えを乞うのも大事ですが 最後は必ず自分を信じて自分の分析・検証・判断をして下さい(他人の言葉を鵜吞みにしたことが原因でブローしたり全焼してしまったとしても 誰も補償はしてくれませんし、加工で削り取ってしまった箇所を元通りに修復はしてくれませんし、買った部品の効果を実感できなくても返金してくれません)。
そして信じるに値する自分の感覚やノウハウを自分自身の手で育てていって下さい。 作業は人に委託してもいいのですが、感じ取ったり判断したりすることに関しては 最後の寄る辺は必ず自分自身になってきます。

たとえどれだけ実績のある人が主張するノウハウであっても、試してみると効果が得られないケースだってあります。 自分の車体の他の箇所に何らかの手落ちがあるせいだったケースもあれば、単に自分か相手がプラシーボ効果に惑わされているケースだってあります。 そして気温や湿度や気圧を含めて 標高や立地の条件の違いのせいで相手と自分が同じ環境を得られていないのが原因だったりするケースもあります。

とにかく妄信や思い込みは禁物です。

 

私は現役時代に いきなり「メインジェットは何番# が入ってるんですか?」と質問されても全く相手にしない人間でした。
その理由は、まずその前に確認しておかなければならない筈の 肝心なエンジン内部の仕様や点火系や燃料供給ラインの構成やエマルジョンチューブの番手# やアウターベンチュリーのサイズとそれが純正形状か否かなど 踏まえておくべき非常に重要な要素を無視して 水面の上に見えている断片的な部分だけの話をしたところで全く意味はありませんので、端的にメインジェットの番手# だけを回答しても無駄だったからです。
これは数学の問題で「答えだけ合っていても満点はもらえず、計算の過程が適切であるかどうかを問われる」というのと同じようなものかもしれません。

また 私の現役時代にはよく「カメアリの森さんは “○○について教えて下さい″ と言っても何も話してくれないけど、トライ&エラーで困っていたり行き詰まってしまった時に自分のデーターを持っていって具体的な質問をすると、とても丁寧に答えてくれる」という噂を聞いたことがあります。 これは高飛車だとか大名商売だという意味ではなくむしろその逆なのですが、物事をある程度以上のレベルまで突き詰めていった経験のある人なら理解できるでしょうし、今は私にもその理由が分かります。

 

この記事は読む側からしてみれば本文中にやたらと回りくどい言い回しや表現が出てくると感じられたと思いますが(実際に対面での会話の時にはここまで回りくどい言い方はしませんけど…)、明け透けに言うと「チューニングとは学会や業界団体を組織して学術的に研究し尽くして確立された概念として形成されたような 洗練されたものではなく、多くの先人たる好事家たちが “好きこそ物の上手なれ″ で 徒手空拳というか手探りで環境や条件を統一することなく個々がバラバラに遊び散らかした記憶の残骸(もちろん私のもその中の一つです)」に過ぎません。 なので言葉遣いや言い方を一つ間違えるだけで内容や主旨が正しく伝わらず、上辺の言葉だけを鵜呑みにしていたらトラブルやエンジンブローの原因となってしまうおそれさえあります。
自分では検証して感触を得た上でこうだと思っていても 敢えて存在し得る全ての可能性を検証し尽くしてまではいないのであれば、「自分はこうだと感じる」若しくは「自分はこうではないかと考えている」という表現に留め あたかも存在する全ての物事を網羅したのような言い方で安易に断定するべきではないというのが、チューニングという手探りと探究の道無き道には適切な取り組み姿勢だと考えているからです。

自分が「そこまでは必要ない」と考えるのもその時点そのレベルでの判断に過ぎないわけですから、そこで「これは絶対に役に立たない」とまで断定して完全否定してしまうのは視野狭窄というものですし、実は自分のレベルがその必要性を理解して効果を享受できるレベルに達していないだけだった(次の領域に到達してみないとその効果や意味が分からない)などということはよくありますからね。

 

今回はお問合せに対して長文での回答になってしまいましたが、ここまで読めばその理由がお分かり頂けたかと思います。

 

 

  

末筆になりましたが、近田さんのカーライフが充実したものになるように祈ってます。 楽しみながら頑張って下さい。
また何かありましたら 遠慮なくコメント欄にでも書き込んで下さい。 私でお答えできることでしたら何でもお話しさせて頂きますので。

では、また。

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コメント

盛豚さん丁寧に細かくありがとうございました。
フロート室増量をしている13Bペリやブリッジを最近見る機会があり今現在必要性を感じていない私との違いを分かりやすく説明して頂きありがとうございました。
エンジンルームに燃圧計をレギュレターの後ろに入れて燃圧を見たり(燃圧計を車内引き込みも考えましたが手の届く所までガソリンが来ている事のデメリットを考えやめました)油面を1ミリ単位上下に変えてみたりしてもこれと言った不具合を感じていないので今の所はノーマルポンプ+レギュレターのシンプルな燃料供給で楽しんで行こうと思います。
また沼にはまった時にはコメントさせて頂きたく思います。ありがとうございました。

>近田さん
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燃圧計を車内に設置することのリスクを考えて見送りにするほどの判断力がある方でしたら、フロート室を外側へ拡張することのリスクについてもお分かり頂けますよね。

余談になりますが私は次のキャブとして62φのダウンドラフトを手に入れていました。 取り付けてエンジンに火を入れてテストをしてみたところ本体に鬆(ス)が入っていて微かな燃料漏れが発生していることが確認できた為{鬆(ス)そのものは どんなに目を凝らして見ても目視できない微細なものでした}、51φIDAに戻しました。 補修する為に燃料にも溶けないパテを探しているうちに休眠状態に突入してしまい現在に至ります。
慎重になっていたのでかなりしつこくチェックしていたせいか 幸いにも早く発見できて事なきを得ましたが、若い頃みたいに「とにかく乗りたい!」という焦りが強かったら火災に至って、最低でもエンジンルームが炎上・ヘタをすると全焼していたでしょう…(一応消化器は常備してましたけど…)。

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