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ファースト・ロット (ニッコールS Auto 50mm f1.4)

我ながら懲りない奴だとは思いますが、またニッコールの標準レンズを手に入れました。
実は色々と迷ったのですが 今回はこれまでとは異なるスタンスと動機から 入手に踏み切りました。

Ns01

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【始めに】

 

以前にも述べましたが、写真撮影用レンズに関する個人的な信条として「レンズの価値はスペックやブランド・ネームバリューや業界の評価ではなく、発色や描写性などの “映りとその特性” にこそある」と常々考えており、わざわざ時間や労力を費やしてまで手に入れるに値すると感じるレンズは すなわち「作例を見てその “映りと特性” に惹かれた物」を対象としてきました。

その意味で ニッコールS Auto 50mm f1.4 は該当しているものの 既に2本も保有しています。 当然ながら特に探してはいなかったのですが、それにも拘わらず このレンズを手にした理由は「この個体が持つ意味と史料価値」という意義でした。

 

少々大袈裟に聞こえるかもしれませんが、私にとってこの個体は単なる撮影機材といった小さな存在ではなく “半世紀に亘って栄華を極めた日本製一眼レフカメラと撮影機材の歴史の足跡の一つであり、更には 失われた「良い物を作ろう!」という日本の物作りと高度経済成長期という熱い時代の忘れ形見” だと感じています。

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【 ニッコールS Auto 50mm f1.4 について】

 

私がカメラと写真の趣味に目覚めたのはミノルタα-9が登場した頃で、既に業界では「標準レンズ」といえば『50mm f1.4』というスペックを持つレンズとされており、絞り開放での f 値(以下、「開放値」と記述します)がこれを下回るレンズは性能に劣る初心者向けの廉価版と見做されていました。 開放値 f1.4 のレンズを大口径とか高性能などと言ってありがたがる人は見当たらず、まさしく標準レンズその基準とされていてどのメーカーも判でついたようにラインナップしている「 “ただの” 良いレンズ」という扱いだったのを覚えています。

「戦争を知らない子供たち」のように、開放値 f1.4 が35mm判一眼レフカメラ用レンズとしては事実上の上限であり到達地点であることを、それが一朝一夕では成し得なかった技術の高みであったことを、当時の私は全く知りませんでした…

 

※(ニッコールS Auto 50mm f1.4 よりも後の時代に50mmの焦点距離でも f1.2 が達成されましたが、到達できたのはごく限られたメーカーだけでした。 またAF時代にはそれ以上のスペックを実現したモデルもありますが、レンジファインダー時代のレンズ群で やり過ぎが災いして破綻したズノーを除く f1.1・f0.95 級の「標準」という言葉からは逸脱した例と同じで 実際には開放に近い域だと収差が酷くて中心部以外の像が多重に分身してしまうことなどから、最低でも1〜2段は絞らないと鑑賞には耐えず 本当の意味で実用できる絞り値の域は f1.4級の性能が安定しているレンズと変わらなかったり更にもう少し絞らなければならなかったと聞いていますし、それは実際に見た作例からも確認できました)

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それまでの主流だったドイツ製レンジファインダーカメラから主役の座を奪った日本製一眼レフカメラは、「被写体の撮影像そのものをファインダーで直接目視確認できる」という長所と引き換えに、その為のシステムであるミラーボックスをレンズとフイルムの間に設置するスペースを確保しなければなりませんでした。
つまり光学系技術として一度完成した 従来のレンジファインダーカメラ用 よりもバックフォーカスを大幅に伸ばす必要に迫られた訳で、それまで培ってきた光学設計が通用しなくなってしまい、一からやり直しになったわけです(レンジファインダー時代には主流だったゾナータイプの光学を持つ標準レンズが見られなくなり、判でついたようにガウスタイプをベースに補正用レンズを1〜2枚追加した変則型のダブルガウスタイプを採用した物ばかりになったのは このせいだと云われています)。
この影響で標準レンズの 開放値の水準が後退する結果になってしまいました。

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レンズの開放値を無理に上げるとしても限度がありますし、何より一定の水準を超えると収差が大きくなり過ぎて撮影像が乱れてしまい、鑑賞に堪えるようなシャープな像を得られなくなります。
この開放値について 品質を安定させた大量生産が可能でなお且つ現実的な価格の範囲内に収めつつ 一定の水準を満たせる上限こそが「標準レンズの開放値」となるわけですが、ライカ式レンジファインダーカメラ用の標準レンズでは f:3.5 → f:2.0~2.8 に進歩していました(価格や生産背景が逸脱していたり 実際の描写性能において顕著な弊害があるなどの極端な例は除きます)。

50mmクラスで開放値 f:2.0よりも明るいレンズは夜間撮影用の特殊レンズ(『ノクトン』など 通常撮影では一般レンズに比べてゴーストやフレアや収差などが顕著で描写性がやや劣るとされている 大口径の物)とされていたレンジファインダー時代に、後発のニッコールはあくまで一般撮影用の標準レンズとしての描写性を獲得しつつ 量産できる f:1.4 を実現するようになります。
しかし一眼レフカメラへと移行したことにより これが f:2.0~2.8 辺りまで後退して、レンジファインダー時代に実現した開放値 f:1.4 を再び獲得するのは困難になってしまいました(M42系レンズの好事家の方には説明の必要もないと思いますが、海外の一眼レフ用レンズにはこの辺の開放値の物が多いのはその名残りでしょう)。

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標準レンズは開放値 f:1.5 あたりから絞り開放での被写界深度が急激に浅くなり始めるので、背景をぼかして被写体をクローズアップした撮影効果を出しやすく「高性能レンズ」という評価を得る傾向があります。
レンジファインダーカメラ用標準レンズで一度 f:1.4 の量産に成功していた日本光学社の技術者達は 一眼レフカメラに移行した後もこれを諦めることができず、「どうしても大量生産品の標準レンズでもう一度 f:1.4 を実現したい!」という強い拘りを持っていたのだろうと、後世の同社の技術者が述べられています。

同社が一眼レフカメラ用レンズで 50mm f1.4 を実現できたのは、ニッコールS Auto 5cm f2(開放値がまだ低かった)・ ニッコールS Auto 5.8cm f1.4(バックフォーカスの問題をまだ解決できなくて 焦点距離を50mmまで縮められてないし、描写性能も見劣りして改良の余地があった)に次いで三本目の標準レンズとなる ニッコールS Auto 50mm f1.4 でのことでした。

このレンズが登場したことによって 50mm f1.4 は業界のメーカーが満たすべき『標準』となり、そのおかげで以後 今日に至るまでのユーザーは当たり前のようにこの高スペックを手にすることができているわけです(実際、55mm や 57mm や 58mm のレンズでは微妙に画角が狭くて中望遠レンズのように「構図を選ばせてくれない時がある」という意味で少し使い勝手の悪さを感じる場面があり、開放値 f:1.7~1.9のレンズはファインダー像が微妙に暗くて日陰や朝夕の厳密なピント合わせが難しいなど、いずれも少し撮影条件を選ぶところがあります)。

 

後の時代のノクトニッコールがそうであるように 少量スペシャルメイドの高級特殊レンズなら多少の無理も利くのでしょうが、自社が技術を誇示してプライドを満たしても肝心のユーザーが手の届かない価格や供給量では話になりません。 あくまでも万人が手にすることのできるレディーメイドと価格の範囲内でこれを実現し供給するという日本光学社の姿勢は立派だと思いますが、実際にこれを実現するのは大変だったようです。

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手に入れてから実際に使ってみた ニッコールS Auto 50mm f1.4 は 基本的には一般的な評価通りの特性でしたが、その一方で巷の評価では聞いたことのない一面も見せてくれました。
 

ニッコールS Auto 50mm f1.4 は大径レンズにありがちな「収差の大きさに目をつぶって、フォーカスアウト部分のボケを強調したクローズアップ効果を狙おう」みたいな甘えや欲を是認せず、誠実で純粋な描写性能を追求して像面の平坦度(カールツアイス・プラナーがその名の通り追求している、面方向にムラやバラつきのない より安定した描写性能)を追求したレンズだと云われています。
実際に撮影してみてもその辺はすぐに実感できますし、開放域から絞り込んだ f11 辺りに至るまで 絞りによる被写界深度のコントロールが安定していて狙い通りに決まる、ニッコールらしいニッコールだと感じます。

近年は絞りを開けて撮るのも楽しめるようになったので ピントの芯や絞りを振り回すようにして撮ってみるとよく分かったのですが、“開放域のボケ味がダイナミックで魅力的な代わりに、ピントの芯が狭くて 外せば描写が破綻しやすいという弱点と表裏一体のピーキーなレンズ” とは違って、このレンズは絞り開放で撮影しても被写体の背景は f1.4 という開放値のわりにあまりダイナミックなボケが発生しません。 またボケ味の美しさを追求したレンズでもないので その辺も巷の評価通りでした(ありふれた評は他所でいくらでも読めるので ここまでにしておきましょう)。

 

その一方で、実際に開放域で馬鹿正直に被写体の芯にピントの芯を置く撮り方だけではなく、少し応用を効かせた撮り方になりますが 被写体との距離を保ちつつ敢えてピントの芯を 構図が示す被写体の芯から 意図的にずらしつつ隠してやることで見る者の心理の裏をかく撮影手法を用いて撮ってみると、最近「オールドレンズ」としてもてはやされているレンズ群(ニッコール以外)の評にありがちな「フワッとした映り」とか「ジワッと滲む映り」の特に後者に該当するような画を意外と得やすい一面があり、しかも持ち前の像面の平坦度のおかげで その効果がフレーム全体に偏りなく得られることも実感できました。

このレンズの作例の多くが示すように 自分で撮ってみても「カリッ」としたシャープな像はいくらでも出てくるのですが、こうやってシングルコーティングのレンズ特有の柔らかさを引き出す撮り方を試してみると 今度はニッコールらしからぬ 味わいのある画で応えてくれるから面白いものです。
 

このように、当たり前の撮影で優れているだけではなく 構図やピントや絞りを振り回したり揺さぶるような撮り方をしても 破綻のない映りでついてきてくれるあたりは、像面の平坦度が高くて映りに破綻のない “強い” レンズならではの描写力であり、性能の深さだと思います(畑は違いますが、車に例えるなら「フラットトルクで中低速が太く悪条件下でもストールしにくくて、どこから踏んでもついてきてくれる粘りのあるエンジンを積んでる車は乗りやすい」みたいなモンですかね)。
そしてこれは「フォーカスアウト部分にダイナミックなボケを得やすい描写特性を持つことが魅力であり 大きな武器でもあるレンズが、それと引き換えに背景をボケで吹っ飛ばし過ぎてしまったり『ピントの芯が 構図の示す被写体の芯からずれてしまうと 描写そのものが破綻してしまい、撮影条件や描写が機材によって制限されてしまうなど “時々 撮影の邪魔をすることがある” 』という弱点を持つ」という例とは対照的な特性だと云えるでしょう。

こうやって考えてみると ニッコールが報道分野で絶大な支持を得てシェアを獲得できた理由がよく分かる気がします(ニッコールはガウスタイプに限らずレトロフォーカスタイプでもゾナータイプでもこうした像面の平坦度を重視している設計になっているので、レンズと格闘しなくて済むから被写体に100%集中できるし、突発的に光量が変わった時に シャッタースピードではなく絞りで露出を調整しても描写が破綻しないという安心感があるおかげで、右手をシャッターボタンから離さなくて済むので シャッターチャンスを逃しにくいモンね。 同社が初めて導入した露出オート機構DS-12が絞り優先ではなくシャッタースピード優先オートだった理由がよく分かりましたよ…)。

 

元々は「ゴーストを活用して光を表現する画を撮るのに使おう」という限定的な目的で入手した ニッコールS Auto 50mm f1.4 に、実はこんな一面と奥の深さがあると分かったのは、嬉しい誤算でした。

 

※(絞り値 f:2・ピント5m で撮影。 プロミネント用ウルトロンである程度絞った時の画に通じるものがあると感じます)
Dscf16867  

※(絞り値 f:1.4・ピント∞ で撮影。 ズノーやアンジュニュー他 いわゆる「滲みレンズ」の類の画に通じる絵画的なものがあると感じます)
Dscf16865  

このレンズについては他にもポット修正の廃止など画期的なことがあったのですが、詳細は ニッコール千夜一夜物語 さんで詳しく紹介されてますのでご参照下さい。

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ニッコールAuto 50mm f1.4 の系譜については ローランド さんが公開されている資料{好事家の間で有名なこの資料の元々の出所は「メーカーよりも詳しい」と云われたニコンハウス(スキヤカメラ社)さんではないかと聞いたことがあるのですが 詳細は不明}から色々と読み取れます。

それによるとこのレンズは1962年3月~1974年6月の12年(心臓部の光学系に至っては次世代の Newニッコール にも引き続き採用されており、これを含めると14年になります)に亘って生産・販売されており、詳細なロットと生産期間は下記の通りになっています。

Nikkor-1  

ニッコールレンズのシリアルナンバーは 000001~ といった具合に素直に1番からは始まらないことや 完全な連番制ではなく欠番もあることで知られていますが、表を見てみると確かに「うわぁ…💧」となってしまいますね。(苦笑)

細かい情報までは書き込みきれないので大まかな情報のみを抜粋して、便宜上の識別策として生産順にロットの順番を①~⑥と打ちました。
例えば ロット①の最終ナンバーとロット②の最初のナンバーは連なっておらず、454671~465010は欠番となっていますが この間に該当する番号のように欠番になっている番号は補修部品に回されたりするケースがあるようです(実際に他のモデルで 本来なら欠番の筈のシリアルナンバーを刻印された銘板が付いている中古レンズを市場で見かけたことがあります)。

もしこの表の各ロットのシリアルナンバーの範囲内だけは連番であり欠番がないのであれば、ニッコールAuto 50mm f1.4の生産本数は計算上で

 S  :  790,644 本
 SC:  333,734 本
 計 :1,124,378 本

だということになりますが 詳細は確認のしようがありません。 だた、この計算上の本数を超えることはないのだけは確かでしょう。

今回手に入れた個体のシリアルナンバーは最初に手に入れた個体と同様 初期ロットであるロット①(絞り羽根が6枚の物)に該当する番号でした。 表を見るとロット①のシリアルナンバーから生産本数は140,560本以下であることが分かりますが、実はこの初期ロットの中でも絞りリングの形状など より細かい部品の形状が異なる5種類のバージョンが存在することが、好事家の間では知られています。
その中でも1番目のバージョンについては絞りリングのグリップ部分の形状が少し異なるため、外観を見ただけでも簡単に識別できます(この辺はバルナックライカの エルマー5cm f3.5 にも似た、バリエーションの豊富さと はまったらキリがない “沼” 感がありますw)。

※(左が今回手に入れた個体。 同じロット①同士でも この二つの個体ではバージョンが違うので、絞りリングのグリップ部分の形状が違う)
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そして今回手に入れた個体はまさしくこの1番目のバージョンに該当する一本なのですが、入手した理由はそれだけではありませんでした。

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【本題】

 

前置きが長くなりましたが 今回はここからが本題です(すぐ済みますけど…w)。

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まず 前章の後半から『ロット』という言葉が出てきていますが…

一般的に 製造業において大量生産される製品の単位生産量とその一括りを 区分別に「ロット」と呼んで資材や生産ラインや品質などあらゆることが管理されています。
ニッコールAuto 50mm f1.4 の場合は前述の最初のロット①に該当する140,560本(ここから先はロット内に大きな欠番がないという仮定で話を進めます)が 大まかに「初期生産ロット」となります。

またその生産期間についてですが、ロット②の開始が1966年4月~であり 以降のロットは全て並行しておらず連続していることから、ロット①の生産・販売期間は~1966年3月であろうと推定できます。 従って1962年3月~1966年3月の49ヶ月間に亘って生産されていたことになり、当時の労働条件から察するに一ヶ月あたりの稼働日数は平均約25日と推定されるので(祝日なども勘案)、あくまで計算上の参考数値ではありますが…

 月産:140,560÷49=約2,868
 日産:    2,868÷25=   約114

と、得られている情報からひとまず「月産約2,868本・日産約114本」という数字が読み取れました(←ロット②以降は生産体制が増強されたと見えて2~3倍の生産量になっています)。

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これらを踏まえて今回手に入れた個体のシリアルナンバーを見てみると、3142XX(下二桁はナイショ)と刻印されています。 ロット①のシリアルナンバーは資料によると314111番から始まっているので、この個体は生産開始から90番目に近い番号であることが分かりました。

この「日産約114本の製品の約90番目の個体」が意味するモノとは…、つまりそれが『ファースト・ロット(それも初日に生産された可能性がある)』の物であるということなのです…

※(右が今回手に入れた個体。 なぜかピントリングの距離表示が「feet」のみで「m」の距離表示がない…)
Ns03  

ニッコールレンズには昔からマニアと云えるほどの愛好家が多く、それは国内に限った話ではありません。 例えばオランダの Nico van Dijk(ニコ・ファン・ダイク) 氏のように私など足元にも及ばないような変人っぷり(←この場合は誉め言葉ですw)で知られる方もいます。

氏のサイトでは後年のモデルである ニッコールS Auto 55mm f1.2 に関する記事で、生産開始から僅か10番目の個体(明らかに生産初日の製品💦)や76番目の個体(生産開始三日目の製品)が披露されていますが(ファースト・ロットを輸出に回すとは思えないので、きっとわざわざ買い付けに来られたか日本国内のバイヤーに伝手があるんだろうなぁ…💧)、そこまで強烈ではないにしても今回手に入れた ニッコールS Auto 50mm f1.4 の個体もまたファースト・ロット品であることは確信できました。

私は「自動車などの動力機械や駆動装置については 初期ロットは何かとトラブルがつきまとうので避ける」というクチですが、カメラ本体とは違ってMFレンズについてはその手の心配は杞憂だと考えています。 何より最近は減少する一方の カビ玉キズ玉などの訳アリ品ではない「物は確か」な個体だったので、とても史料価値(←希少価値ではない)がある個体だと感じます。

 

 

※{このように使ってみてもどの方向にもいくらでも掘り下げてみても楽しめるあたりは バルナックライカ用レンズの エルマー5cm f3.5 に共通するモノを感じますね。 ただ こちらにはエルマーのような「物資事情の悪い時代も乗り越えて永きに亘って生産し続けられた物にしか見ることのできない世界観というか 戦争や世界恐慌などをはじめとする世界史との関係を絡めて理解することで、撮影機材を通じて人類の歴史の一部と社会的な背景やその移り変わりといった深みを一緒に味わえる」という深み(その辺はフランス・ボルドー地方のビンテージワインに云われる「年式によってその時代毎の社会背景や環境などあらゆる要素が良い時もあれば苦しい時もあり、それらの影響が味や出来の違いとなって顕著に表れる」という製品を通じて世相を読み取れる文化に共通するものがありますね。 だからこそフランス・ボルドー地方のビンテージワインやバルナックライカなどは “物” でありながら敬意を払う対象とされて相応の敬意ある価格でいつまでも取引され続けているのでしょう。 私も多少撮影機材を保有していますけど、さすがに戦前の物は恐れ多くて一つしか持っていません…)はありませんが、その分 低予算で楽しめるのがありがたいですねw これについては優劣の問題ではなく 単純に属してきた時代の違いなのだと思っています}

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【あとがき】

 

何分田舎に住んでいるので 私がこの個体を見つけたのは販売店の店頭ではなくNETオークションであり、他の入札者達の提示額は一様に「物が綺麗なので安く手に入るのなら買ってもいい」と言わんばかりの相場に満たない札ばかりでした(通常 シリアルナンバー314000番台の個体が出てきた時は、相応に敬意のある札での競り合いになる傾向があります)。

それでもたった一日限りの出品物を目ざとく見つけて手を伸ばしてきたのは大したものですが、とてもこの個体の持つ意味と意義を理解できているようには見えなかったというのが率直なところです(一人だけそれなりの札まで競っていましたが 私に競り負けているようではね…)。

こういう物は できれば初期ロットのニコンFか せめてF2くらいは持っている上に「それなりに相応しい人・分かっている人・覚悟のある人 の手に渡って欲しい」と願わずにいられない私としては、黙っていられませんでした(無闇に高いプレミア価格がついて欲しいという意味ではありませんが、安い物をお求めの方は他をあたって下さい とでもいいますか…)。

 

※(プライバシー保護の為、ナンバープレートや個体識別用のシリアルナンバーの類は基本的に非公開 or 部分公開とさせて頂いております…)
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大量生産の工業製品で希少性はない物であっても「それが次の時代の新しい基準を作った」などの史料価値がある物については、保存状態の良い個体や初期生産の個体などをメーカーへ寄贈して展示や保存の対象にして貰うというのも、社会的な一つの方法だということは知っているつもりです。
しかしながら大抵の国内企業には情報部がないので自社の歴史には疎いようですし(欧米とは違って「勿体ないこと」ですよね💧)、今のメーカーは かつて大変な苦労の末に開発に成功して生産・販売を実現した経緯とその存在が持つ意味と意義を理解できるかどうかは分かりません(もし分かる人がいるとしても技術者の中のごく一部なんだろうな…)。

今から十数年前に大阪SS(修理やメンテナンスを受け付けるサービスセンターのことです。 本社の近くに住んでない一般消費者にとってSSは単なる修理受付窓口ではなく、事実上の “唯一メーカーに直接コンタクトできる窓口” でもあります)のフロントが銀塩カメラのことを知らない人ばかりになっていて話が全く通じなかったくらいですし(その後本社でもMF時代の撮影機材について部品交換の必要がない単なるO.H.さえ受け付けなくなって久しいので、どうやら今の同社は古い物には関わりたくなさそうですね。 企業にとっては古いユーザーや過去の製品よりも明日の売り上げの方が大事なのは分かるのですが、この淋しさは何だろう…)、資料・展示用としてメーカーに寄贈する意義も今一つ感じにくいところです。

もし本社の人と直接面談する機会があったら、また違ってくるのかなぁ…

 

※(自動車業界だとトヨタ社などはメーカーの垣根を越えて色々取り組んでいるで、近年も凄い資料価値のあるカローラが寄贈・収蔵されたようですけど…)

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そんなわけでこの個体については 後世へ受け継ぐまで当面の間は私の手元に所蔵して、ありがたく大切に使わせて頂くことにしました。

 

現物が届いた時に清掃・点検したところ、絞り羽根にグリスが付着して作動に粘りが発生してしまっているのでO.H.する必要があるのですが、前述の通りメーカーSSではもう受け付けて貰えないので 信頼できる筋へお願いするつもりです(ついでに墨入れの汚れも洗浄して貰えるといいなぁ…)。

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